【ビジネスアイコラム】G7分裂は中国に漁夫の利 膨張抑止で結束、ルール破りに厳格対応 (2/3ページ)

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 WTOに頼れば、自由貿易体制が守られるというのは幻想に近い。WTOの貿易紛争処理パネルに提訴された国・地域別件数を見ると、圧倒的に多いのは米国で、中国は米国の3分の1以下に過ぎない。提訴がルール違反容疑の目安とすれば、米国こそが「保護主義」であり、中国は「自由貿易」だという、とんでもない結論に導かれる。事実、習近平・中国国家主席はスイスの国際経済フォーラム(ダボス会議)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際会議で臆面もなく自由貿易の旗手のごとく振る舞っている。

 中国のルール破りに対し、日米欧はとにかく甘い対応しかとらなかった。理由は、中国市場でのシェア欲しさによる。WTO提訴の件数が少ないのは、ビジネス取引で報復を恐れる企業が多いせいでもある。日米欧の産業界は「中国製造2025」の目玉である半導体の国産化プロジェクトは巨大な半導体製造設備需要が生じると評価し、歓迎してきた。

 米国歴代の政権は民主、共和党を問わず、中国との「戦略対話」を行い、中国側が小出しに提示する市場開放を評価した。中国の対米貿易黒字が米国債購入に回ればニューヨーク金融市場の安定につながるとみて、米側は対中貿易赤字削減を強く要求しなかった。中国人民銀行は対米貿易黒字で稼いだドルに合わせて人民元発行量を爆発的に増加させてきた。そのカネを国有商業銀行に流し込んで、インフラ、生産設備や不動産開発に融資させ、経済規模を膨らませる。そして経済成長率の2倍の速度で軍事予算を増やす。この資金源をたどるとドルに行き着く。

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