【ビジネス解読】韓国、酷暑で崩れた「脱原発」政策 節操問われる文在寅氏 (2/4ページ)

猛暑が続き、原発の追加稼働に踏み切った韓国の文在寅大統領(AP)
猛暑が続き、原発の追加稼働に踏み切った韓国の文在寅大統領(AP)【拡大】

  • 暑さを和らげるために取り付けられてあるミスト装置から散布される霧状の水を浴びる人=ソウル(AP)
  • 暑さから逃れてソウル市中心部を流れる清渓川の日陰で休む韓国市民(AP)

 これを受け、文政権は今年3月時点で53%にまで下がっていた原発の稼働率を8月に80%に引き上げる方針を決めた。稼働率は、再稼働を前倒ししたり、点検のための運転停止を先送りしたりするなどして引き上げる計画。7月下旬に稼働した原発を含めると、電力ピーク期に計5基の原発を追加稼働させるという。予想外の酷暑が原発の必要性を浮き彫りにした格好だ。

 韓国の朝鮮日報(日本語電子版)が伝えた電力取引所の公表データによると、7月第3週時点で石炭火力発電所は国内61基中59基、液化天然ガス(LNG)火力発電所が237基中230基それぞれ稼働した。稼働率はともに97%。一方、同期間に原発は24基中16基が稼働。稼働率は60%超だ。ちなみに政府が脱原発にかじを切る前の2016年7月に稼働していた原発は20基で、今年よりも4基多い。この時の稼働率は80%超だった。

 火力はフル稼働状態で余地がなく、しかも代替電源がないことを踏まえると、今夏の電力不足に対応するためには原発を動かす以外に選択肢はない。文氏とて逆らうことができない現実だが、文氏が引き上げる原発稼働率の水準には驚く。脱原発政策を推進する以前とほぼ同じ水準だからだ。それも、日本のように節電への取り組みを広めるなど、追加稼働の前に何か手立てを講じたわけでもない。脱原発を強調しながら、原発稼働率をそのまま元に戻すというのはいまひとつ腑に落ちない。類例のない猛暑のため、「原発の追加稼働やむなし」という雰囲気だ。

「国民受けを狙ったずるい話」