【論風】米大統領に翻弄される原油価格 上下に圧力、先行き不透明に (3/3ページ)

日本エネルギー経済研究所常務理事の小山堅氏
日本エネルギー経済研究所常務理事の小山堅氏【拡大】

 中国は、対抗措置として同額の米国からの輸入物品に25%の追加関税を賦課、一歩も引かない姿勢だ。米国は追加関税の対象を2000億ドルまで拡大する考えを示すなど、貿易戦争激化の先行きも不透明である。米国は国家安全保障を理由として、鉄鋼・アルミ製品への追加関税を欧州連合(EU)、日本、カナダ、メキシコなどに賦課し、ここでも貿易戦争が展開されている。

 貿易戦争の激化は、世界経済減速をもたらし、中でも、米国・中国経済を直撃する。米中間の報復関税が極端に悪化する場合、成長率が米国約2%、中国約3%低下、両国の石油需要が合計日量50万バレル低下する可能性もある。この場合、国際石油市場は供給過剰に転じ、原油価格が50ドル前後まで下落する可能性も考えられている。

 現在、70ドル前後で推移する原油価格だが、今年後半にかけて大荒れの展開になる可能性がある。その主要な原因となりうるのが、イラン問題と貿易戦争であり、ともにトランプ大統領の政策が今後の展開の鍵を握る。まさに“トランプ要因”に原油価格が翻弄され続ける状況が続くことになろう。

【プロフィル】小山堅

 こやま・けん 早大大学院修了。1986年日本エネルギー経済研究所入所。2011年から現職。英ダンディ大学留学、01年博士号取得。専門は国際石油・エネルギー情勢分析など。59歳。長野県出身。