とにかく産んでもらい、国が支える-というのが保革を問わず、歴代政府の立場。育児支援は予算の「聖域」扱い。08年の金融危機後、北欧などほかのEU諸国と同様に出生率が下がると「フランス『特例』の終わりか」(ルモンド紙)、「危険な減少」(レゼコー紙)などと大騒ぎだ。
日本との大きな違いは、「3歳まで親が育てないと悪影響が出る」という「3歳児神話」が希薄なこと。パリの保育園長は「男女格差がなくなり、女性の出世競争も激化したので、育休をとらず、産後2~3カ月で預ける母親が多い」と話す。昼の公園では肌の色の違う移民出身シッターたちが乳幼児をあやす。
ドイツ、格闘中
隣国ドイツでは90年代、合計特殊出生率が1.24まで下落。メルケル首相は2005年の就任後、7人の子供の母フォンデアライエン家庭相(現国防相)を起用し、育児支援に本腰を入れた。
保育所不足は、日本並みに深刻だ。5月にはベルリンで母親ら約3500人が抗議デモを行った。
主催者の一人、大学職員のカタリーナ・マールトさん(30)は1歳男児の母。「妊娠中、保育所を予約しに行ったら『400人待ち』と言われた。入るのは至難の業。ネットで入所の権利が千ユーロ(約13万円)で売買されていたので、頭にきたわ」と憤る。
政府は07年、75万人分の保育所増設の目標を掲げ、13年には1歳以上の幼児に「保育請求権」を認めた。育児手当も増額し、現在は子供1人当たり月194ユーロ(約2万5千円)、3人目には月200ユーロ(2万6千円)支給する。