EUは、カンボジアの縫製品輸出額の約46%を占める。米国向けの24%、日本向けの16%、カナダ向けの9%などと比べてずばぬけて多く、特恵関税が停止されれば影響が大きいとみられる。現地紙は、特恵関税措置が停止されれば、関税コストとして年間約6億8000万ドルが必要となると試算している。
マルムストローム欧州委員の発言について、フン・セン首相は訪問先のブリュッセルで「EUが特恵関税を廃止しても、カンボジアへの影響は小さい。なぜなら、カンボジアが経済成長を続ければ、いずれ特恵関税は廃止される。また、米国や日本など、われわれには市場が欧州以外にもある」と、強気な姿勢を見せている。
だが、カンボジアの縫製業界からは「大企業は特恵関税が廃止されても生き残るが、問題は中小企業だ。さらに労働者にしわ寄せがくる恐れもある」との声も出ている。
アジア開発銀行、国際金融機関などが発表しているカンボジアの今年の経済成長率予測は、いずれも7%台。19年と20年も7%前後の成長率が見込まれるとしており、安定的な発展が続いている。
フン・セン首相は、人権擁護や政治情勢には口を出さない中国からの支援や投資に大きく依存するようになっており、EUに歩み寄るかどうかは不透明だ。一方で、最大野党を排除した今年の総選挙で安定基盤を築いたことから、敵対してきた欧米との距離感や国際社会でのバランスにも目配りを始めている。EUとカンボジアの駆け引きが注目される。(カンボジア月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)