デジタル課税、日本に暗雲 英導入表明で国際協調機運低下も (2/2ページ)

 だが、議論が難航し、15年に公表したBEPSの最終報告書では具体的な対応策をまとめられなかった。現在も議論を継続し、20年までにルール確立を目指すとしているが、巨大IT企業を抱える米国や中国の反発もあり、対立が解消されるめどは立たない。

 こうした状況に業を煮やしたのが欧州連合(EU)だ。欧州では米IT企業が利益をむさぼる状況にデモが頻発。欧州委員会は今年3月に、中長期的な法人課税ルール改革が実現するまでの暫定措置として「デジタル税」の導入を提案した。世界売上高7.5億ユーロ(約970億円)以上、EU内でのデジタル活動売上高5000万ユーロ以上のIT企業を対象に、消費地となったEU加盟国ごとに売上高の3%分を課税する内容だ。

 ただ、EUでは税制の変更に加盟28カ国の全会一致による承認が必要となる。低税率を武器に企業誘致してきたアイルランドなどは難色を示しており、導入時期は見通せない。EU離脱を控える英国は、導入に二の足を踏むEUを横目に同様の施策を先取りした。

 売上高方式には慎重

 デジタル課税はインドなどの新興国でも導入が進む。日本でも先月の政府税制調査会で有識者から「日本も何らかの独自措置が必要だ」との声が上がった。

 ただ、日本としてはデジタル税のように売上高への課税方式には慎重だ。その理由の一つに、売上税は流通の各段階で二重三重に税がかかり、税金が累積する問題が指摘される。財務省幹部は「税引き後利益を減らさないよう消費者や取引業者に税負担が転嫁される可能性もあり、サービスの不当な値上げにつながりかねない」と懸念する。

 日本は新たな徴税システムを国際協調という形で実現することにこだわるが、各国で英国のような課税導入が進めば、日本はみすみす徴税の機会を失いかねず、公正な国際ルール確立の機運低下も免れない。来年のG20首脳会議の議長国を務める日本。対立する各国の意見をとりまとめられるか調整力が問われる。(西村利也)