【専欄】ブルース・ウィリスも出演…ファン・ビンビンと「越境した」抗日映画 (2/2ページ)

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 製作されたのは、日中関係氷河期の15年。当時は「反日」「抗日」の類がもてはやされ、そこに「米国だって抗日した」というテーマが加われば、話題にならない理由はない。

 同年11月に米ビバリーヒルズで完成記念パーティーが開かれ、製作側の「重慶爆撃を映画化することによって、正しい歴史を思い出させ、文化遺産として残していく」というコメントは、ロサンゼルス・タイムズ紙で報道され、ウィリス氏も「この映画はとてもおもしろい。私の家族はこれが好きだ」などというコメントを、米国向けに発信している。

 出演料3000万元を得たファンさんは「大爆撃」の中で、何を演じたのだろうか。日本的にいえば「特別出演」で主役ではない。演じているのは幼稚園の先生で、爆撃の最中、子供たちを守り、自分の命を犠牲にするといった役どころだ。撮影日数は3日、出演シーンはほんの数カ所だったという。

 米、中、香港、韓国のスターを結集した「大爆撃」は、一説には総製作費15億元ともいわれるが、18年10月の公開は北米の一部劇場にとどまり、中国では中止(無期延期)となった。(今月末に韓国で公開予定)

 「大爆撃」の上映中止の理由は、ファンさんの脱税問題だけではない。米中関係悪化とそれに伴う日中関係改善の兆し、安倍晋三首相の訪中などという政治的な背景も関係する。

 中国のメディアは中国共産党管理下にあり、芸能界もまた然りである。そこで起きることは、政治経済と無関係ではないことを、改めて感じた。