ビジネスアイコラム

「消費増税」財務官僚の呪文 (2/2ページ)

田村秀男

 「リーマン・ショック級の世界経済危機」が起これば、安倍内閣は3度目の延期に踏み出す可能性を示唆してはいる。増税凍結の信を問うためには衆院解散総選挙に打って出るとの観測が一部では根強い。だが、現実はそう簡単ではない。その場合、新年度予算の組み替えが必要で、その最終期限は予算成立後から新元号になる5月までだ。そのわずかな期間でリーマン級の経済ショックが起きるだろうか。

 当面、世界経済に影響を及ぼすのは、中国の景気後退だが、それは既に昨年前半から始まっている。中国経済減速は昨夏、トランプ米政権の対中貿易制裁の追い打ちを受けて加速がかかっている。

 中国の金融崩壊は始まっているが、国際金融市場を巻き込んではこなかった。中国市場は極めて閉鎖的で、グローバル市場とは連動しにくいからである。中国の宿痾(しゅくあ)は巨額の資本流出だが、その大半は中国の企業や富裕層のなせる業であり、米欧のヘッジファンドのような投機筋によるものではない。

 資本流出は16年に年間で1兆ドル(現在の為替レートで約110兆円)にも上ったが、習近平政権による規制や締めつけ強化によって今は年間2000億~3000億ドルに抑えられている。中国から逃げるカネはカリブ海などのタックスヘイブン(租税回避地)に移されるが、その運用先はニューヨーク市場などの国際金融市場である。従って、中国からの資本逃避はニューヨーク株価などをむしろ押し上げる効果がある。

 一国の経済政策は国内のためにやるものだ。不確かな海外の非常時を口実に国内政策を動かすこと自体に無理がある。

 安倍政権は「リーマン級の世界危機」にこだわらず、国内経済重視の原点に立ち返り、早急に凍結宣言に踏み切るべきだ。(産経新聞特別記者 田村秀男)

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