三村会頭は「一つ思うのは、経営トップが逮捕されたからではないが、渋沢氏の思想には現代的な価値があり、(だから)多くの人の共感を呼ぶのではないか。296もの会社、それも純然たる大企業に渋沢氏の思想が何らかの形で残り、日本の独特の資本主義を形作っている」と強調する。そして、「与えられた資源を最大限使って業績を向上させ、会社の将来の可能性をできるだけ広げるのが優れた経営者。私欲でなく、会社のため、社会のために尽くすということだ」と繰り返す。
三村会頭は1月19日に開かれた東商創立140周年記念のセミナーで、渋沢氏の立ち上げた企業が平均120年という長寿の理由の一つとして、財閥と一線を画し、「ビジネスチャンスに対し、人材や資本、インフラ、株主を引き込んだ開放的な会社形態が役割を果たした」ことを挙げた。
日本では、松下幸之助氏や本田宗一郎氏といった発明家ともいえる偉大な経営者、さらには社会課題や規制に挑んだ有能なベンチャー企業経営者が数多く生まれてきた。だが足元では、世界経済を牽引(けんいん)するガーファ(GAFA=グーグル、アップル、フェースブック、アマゾン・ドット・コムの頭文字)のような、デジタル系のプラットフォーマー(サービスやシステムを提供する事業者)が日本では生まれず、世界に後れを取っている現状がある。
優秀な人材は外資系企業に魅力を感じて就職したり、自ら起業するケースが増えている。日本企業や経営者の魅力が低下していることが、背景にあるのは間違いない。一流企業や官僚の相次ぐ不祥事、元気のない日本経済…。渋沢氏が現代に生きていたら、どのような処方箋を下すのだろうか。(大塚昌吾)