トランプ政権丸2年、はっきりした「米中新冷戦」 求められる日本の行動は (3/3ページ)

1月23日、スイス東部ダボスで演説する安倍晋三首相(ロイター)
1月23日、スイス東部ダボスで演説する安倍晋三首相(ロイター)【拡大】

  • 1月9日、米ワシントンで開かれた日米欧の三極貿易大臣会合に参加する米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表(右)と世耕弘成経済産業相(右から2人目)
  • 1月9日、米ワシントンで開かれた日米欧の三極貿易大臣会合で写真撮影に応じる、(左から)世耕弘成経済産業相、マルムストローム欧州委員、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表(AP)

 だが、WTOはこの問題に対応できていない。補助金を出す際にはWTOに通報する義務があるのに、違反を取り締まる手立てがないため中国は義務を守らず、補助金の実態を隠してきたのである。

 昨秋には、日米欧が中心となって罰則を盛り込んだ改革案をWTOに出した。WTOの補助金規定を厳格化する議論も三極で行っている。こうした改革が実現しなければ中国に補助金問題を根本的に改めさせるのは難しい。

 一方、日米欧などWTO有志国は1月、電子商取引分野のルール作りの交渉を始めることで合意した。国境をまたぐデータ移動が焦点だ。中国は外国企業が得た顧客情報の国外持ち出しを封じるなどデータを囲い込もうとする。デジタル覇権と絡む問題だけに日米欧で足並みをそろえられるよう知恵を絞る必要がある。

 WTOをめぐっては紛争解決手続きの上級審に当たる上級委員会の再任人事を米国が拒否している問題もある。上級委の権限拡大に不満を抱く米国と、これを是とするEUなどの溝は深いが、欠員で上級委が機能不全に陥る事態は避けたい。打開への協議を加速すべきである。

 安倍首相はスイス東部ダボスの演説で「ルールに基づいた国際秩序の強化に打ち込みたい」と語った。既存秩序が揺らいでいる今はむしろ、その限界を再認識し、新たなルールを確立する好機ととらえたい。日本が追求すべきは、そのための大胆な構想と具体化に向けた行動である。