経済を知る

消費税10%で自滅の恐れ 増税の「空気」を吹き飛ばせ (1/3ページ)

田村秀男

 家庭でも職場でも「空気を読めない」と俗世間は渡り難いが、国家は別だ。政策が「空気」で決まるようなら、その国は自滅しかねない。消費税増税はどうだろうか。10月に税率を10%に引き上げるべきという「空気」が政官学とメディアを覆っている。(田村秀男)

 「空気」とは何か。評論家、故山本七平さんの「『空気』の研究」(文春文庫)によれば、「非常に強固でほぼ絶対的な支配力を持つ」判断の基準をさす。太平洋戦争時、必ず失敗するというデータを無視した戦艦大和の特攻出撃を例に、「『空気』に順応して判断し決断し(中略)客観情勢の論理的検討の下に判断し決断しているのではない」と述べ、失敗の責任を問われない日本の「空気」に切り込んだ。

 消費税率は平成9年度、26年度に引き上げられたが、いずれも強烈なデフレ圧力を招き寄せて経済を停滞させた。安倍晋三首相は10%への引き上げは2度延期したのだが、「予定通りの実施」を口にせざるをえない情勢が続く。

 拙論は空気を読まない。首相に近い自民党有力議員はあきれ顔で「田村さん、10月10%実施は決まった過去の話よ」。3度目の延期は念頭にもない。国会の議論はもっぱら社会保障財源にどう使うかで、のんびりしたものだ。

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