ビジネス解読

くすぶる消費増税延期論 「海外経済がわが国を下押しする可能性も」 (2/2ページ)

 米中互いの対抗措置がエスカレートすれば、日本企業にもダメージが及ぶ。

 華為の日本企業からの調達額は昨年、66億ドルに達し、今年は80億ドルに増える見通しだった。だが、華為排除の動きが広がる中、同社との取引を停止する日本企業が続出しているほか、第4弾の対中制裁を見据えて中国から生産拠点を移す「脱中国」の動きも出てきた。

 「影響は相当ある。部品の調達網(サプライチェーン)を組み替えないといけない」

 経団連の中西宏明会長は5月20日の記者会見でこう懸念を示した。

予想外のGDP

 「10連休明けに一気に増税延期の見方が強まった」

 モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフエコノミストはこう解説する。実際、同社は増税延期の可能性を従来の30%から50%に引き上げた。

 ところが、多くの市場参加者がマイナス成長を見込んでいた1~3月期国内総生産(GDP)は予想外のプラス成長。月例報告も景気が回復傾向にあるとの認識が保たれた。

 これを受け、自民党の甘利明選対委員長は5月27日のBS日テレ番組で、増税について「延期はもうない」と明言。菅義偉官房長官も翌28日の記者会見で、「リーマン・ショック級の出来事がない限り、消費税は引き上げる予定」と語った。

 こうした事情から、5月末には市場の増税延期待望論は急速に縮小した。モルガン・スタンレーMUFG証券も5月31日付のリポートで「市場参加者の増税延期への期待は大きく低下した印象を受ける」と指摘した。

G7の再来は?

 だが、増税は景気には逆風だ。

 「10月時点で海外経済が減速を続けている場合、わが国経済を下押しする影響が大きくなる可能性はある」

 日本銀行の桜井真審議委員は5月30日、静岡市での講演で増税の影響をこう分析し、警戒感を示した。

 経済協力開発機構(OECD)は5月21日、世界全体の実質GDP成長率が2018年から縮小し、19年は3.2%、20年は3.4%との経済見通しを発表した。日本については、19年と20年のGDP成長率をそれぞれ0.7%、0.6%とし、3月の前回予測から0.1ポイントずつ下方修正した。米中貿易摩擦の影響が大きく、OECDは「持続可能な成長を取り戻すべく、各国政府は共に行動しなければならない」と強調した。

 そんな中、日本が初めて議長国を務めるG20サミットが開かれる。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口氏は「日本は議長国として、機動的な財政政策などを各国に呼びかける可能性が高い。それにもかかわらず、日本のみが増税すれば、他国の景気下支え策に『ただ乗り』していると批判される恐れもある」と分析する。

 平成28年5月下旬、三重県で開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット、G7)で、安倍首相は「リーマン・ショック級」の危機を強調しながら、増税延期の地ならしを進め、直後に延期を正式表明した。

 果たして、G20はG7の再来となるのだろうか…。(産経新聞経済本部 藤原章裕)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus