論風

米中対決の本質と行方 中国はなぜ強硬姿勢なのか (2/2ページ)

 外資側の権益を吸収しながら、外資との合弁企業が中国側単独経営の企業へと所有形態を変えられるように、中外合資経営企業法の第12条で「中外合弁企業の契約期間はパートナー相互で協議して決める」と規定し、契約不更新の法的自由を保証した。また、合弁企業は外資側が機械設備を中国に持ち込み、中国側が負担する土地や工場や原料や労働力などと同等の扱いでその工業所有権や特許技術が中外共用に供されるが、中外合資経営企業法実施条例の第46条で「技術移転取り決めの期間終了後、技術導入側は引き続き当該技術を使用する権利を有する」と規定し、中国側の高度技術の吸収、製品の自己開発能力および国産化の進展をバックアップした。さらに、中外合資経営企業法実施条例の第60条および第61条では製造製品の大部分は国際市場への販売が奨励され、共同経営に当たる中で中国側も国際市場・外貨の獲得能力を高めていった。

 進出の自由と国内法優先

 これらは一見、国家ぐるみで不正を行っている不当な発展戦略のように見えるが、外資は中国の良質で低廉な労働力や広大な市場を求め、安価な一次原材料やインフラ利用料金に魅了されて進出する。今日の世界では、どの国も他国の治外法権を認めておらず、国内法優先であるから外資に進出の自由な選択権がある以上、進出先の国の法律に従うのも当然のことだといえる。

 ここには、現下の国際経済が置かれている制約が2つ、必然的に生じると考えておくべきだ。一つは、現地国家の法制度の順守は、主権国家が寄り集まる世界の限界である。もう一つは、労働力や市場獲得の進出は自由であり、その上で生じる進出側と受入国とのギブ・アンド・テークは、資本主義における経済的自由の宿命である。

【プロフィル】大和田滝惠

 おおわだ・たきよし 上智大学国際関係論博士課程修了。外務省ASEAN委託研究員、通産省NEDO調査報告委員会座長、中日環境科学技術交流会議学術委員会委員、中国江蘇省経済社会発展研究会高級顧問、上海環境会議議長などを歴任。68歳。東京都出身。

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