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人民元安志向する当局の思惑 (1/2ページ)

 今月に入って以降の国際金融市場では、中国当局が毎営業日前に発表する人民元の対ドル相場の「基準値」を人民元安方向にシフトするなど、人民元安を事実上容認する姿勢をみせている。こうした動きをきっかけに、米トランプ政権は中国を25年ぶりに「為替操作国」に認定するなど、米中摩擦は為替を巻き込む形で新たな段階に入っている。ここでは、今後の人民元相場はどのように推移し得るか、さらに中国経済にどのような影響を与え得るかについて考察したい。

 対米除く輸出下支え

 米中摩擦をめぐっては、トランプ米大統領が対中制裁の「第4弾」を(一部を除き)9月に発動する方針を示して以降、再び激化することが懸念されている。こうしたなか、中国当局は人民元の対ドルレートを事実上安値に動くことを容認する姿勢を示したことをきっかけに、米トランプ政権は中国を「為替操作国」に認定した。

 なお、国際金融市場では「1ドル=7元」という水準を「心理的な壁」と捉えられてきたが、その水準そのものに大きな意味はない。というのも、中国当局は人民元相場について24通貨で構成される「バスケット制」を採用しており、米ドルのウエートは2割強と最大ながら、必ずしも米ドル相場の動向のみに依存しないとする姿勢を示してきた。

 その一方、中国当局は毎営業日直前に対ドルレートの「基準値」を発表するなど、対ドルレートを重視していることは変わりない。昨年以降は米中摩擦が激化する度に、一進一退の動きをみせつつ、人民元の対ドルレートは徐々に下落してきた。

 中国当局が事実上人民元安を容認する姿勢を示したことで、当面の人民元の対ドルレートは下落傾向が続く可能性が高まっている。さらに、米中摩擦の激化や世界経済をめぐる不透明感の高まりを受け、足元の中国経済は減速感を強める動きをみせている。

 しかし、米中摩擦により米国向け輸出は前年割れが続く一方、昨年来の人民元安に伴う輸出競争力の向上を受けて、米国向け以外の輸出は前年を上回る伸びとなるなど外需を下支えしている。こうしたことも、中国当局が緩やかな人民元安を志向する一因になるとみられる。

 他方、中国当局は人民元の大幅切り下げは望んでいないとみられる。その背景には、2015年の人民元の切り下げをきっかけとする国際金融市場の動揺、いわゆる「チャイナ・ショック」では通貨バスケットの構成通貨の新興国通貨が下落し、結果的に人民元の実効レートは必ずしも下落しなかったことがある。

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