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人民元安志向する当局の思惑 (2/2ページ)

 資金流出リスク潜在

 中国当局は人民元相場の安定に自信をみせるほか、管理フロート制を堅持する姿勢を示すなど、過度な変動には為替介入も辞さない考えをみせている。なお、中国の外貨準備高は3兆ドル(約316兆円)を上回るなど世界最大の水準にあるものの、「チャイナ・ショック」に際しては人民元相場の維持に向けた為替介入に伴い大きく減少した経緯がある。

 IMF(国際通貨基金)は、世界金融危機をきっかけに外貨準備高の「適正水準」(ARA)を示しているが、その概念に基づけば足元の中国の外貨準備高は適正水準を下回るなど、対外的なショックに対する耐性は低下している。仮に国際金融市場において中国からの資金流出圧力が強まる動きが生じた場合、短期的には為替介入による防戦が可能なものの、中長期的には厳しい状況に陥る可能性も懸念される。

 さらに、中国経済は「灰色のサイ」と称される企業部門を中心とする過剰債務問題を抱えるが、仮に資金流出圧力の高まりをきっかけに国内金融市場の資金繰りをめぐる動きが悪化すれば、景気減速の動きも相まって不良債権問題が噴出するリスクもある。こうした問題は喫緊の課題ではないものの、向こう数年以内に中国でも総人口が減少局面に転じるなど潜在成長率の低下が避けられなくなるなか、中国の過剰債務問題への対応が難しくなる可能性には要注意といえる。

【プロフィル】西●徹

 にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。41歳。福岡県出身。

●=さんずいにウかんむりに眉の目が貝

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