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プチエンゼル投資、じわり拡大 年間上限50万円、子育て感覚で支援 (1/2ページ)

 創業間もないベンチャー企業が苦労する資金調達を助けるエンゼル投資家は、日本で育たないと言われてきた。しかし、個人がインターネットを通じ少額でも非上場企業の株式を取得できる株式投資型クラウドファンディング(CF)の登場で変わろうとしている。投資先がCF運営会社の審査を通過している安心感もあり、投資額が1社当たり年間50万円までの「プチエンゼル」と呼ばれる投資家層がじわじわと拡大。プチエンゼルにとって優しい投資環境を提供する動きも活発化してきた。

 スキルや人脈も提供

 投資目的はIPO(新規株式公開)などによる売却益を得ることだが、それだけではない。「子育てと同じで、初期段階から成長を見守れるから」とプチエンゼルの一人は説く。経営ビジョンに賛同できるベンチャーには多くのプチエンゼルが出資し、1億円近い資金を集めるベンチャーも出てきた。

 昨年11月に創業し、手術トレーニング製品を開発するKOTOBUKI Medical(コトブキメディカル、埼玉県八潮市)は6月、日本クラウドキャピタル(JCC、東京都品川区)が運営する株式投資型CF「ファンディーノ」を通じて591人から8930万円を集めた。あるプチエンゼルは「小さな会社の大きなチャレンジ。子供の成長を見る感覚が欲しかった」と投資理由を語った。

 ファンディーノでの投資経験を持つシステムコンサルティング会社社長の60代男性は「社会を変える技術を持つベンチャーに期待して資金面で支援している。投資した以上は成功してほしいが、戻ってこないリスクも承知している」という。

 不動産テック事業を手掛ける40代男性は「私も起業で失敗したことがある。エグジット(取得株式の売却益によるキャピタルゲイン)を求められる経営者の苦しみも経験している」と理解を示した上で、「だから資金を出して終わりではなく始まり。自分の持つスキルを生かせるなら提供する」と強調。資金の出し手にとどまらず、培ってきた経営スキルや人脈なども惜しみなく提供して、企業成長を支える考えだ。

 資金調達面でベンチャーを支えるべき銀行は実績・担保重視から融資に消極的にならざるを得ない。創業時には銀行を説得できる材料を持たないからだ。ベンチャーキャピタル(VC)は創業間もない「シード期」より事業化を迎える「アーリー期」以降を対象に据える。他人から預かった資金を運用するだけに「戻って来ませんでした」とは言えず、成長が見込めビジネスが加速していく時期に資金を出すようになりがちだ。

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