高論卓説

「中国総中流社会」へラストスパート ライブコマースに託す貧困問題解決 (1/2ページ)

 「ダブルイレブン(独身の日)」も終わり、中国も徐々に年末ムードが高まってきた(来年1月25日が旧正月「春節」)。今年は「618商戦」以降、「下沈市場」(中国地方都市市場)が大きくクローズアップされ、ダブルイレブンでより加速した。その背景には地方都市の発展と、政治的な思惑の2つが見え隠れする。(森下智史)

 前者においては、高速道路などのインフラ設備が地方都市でも進んだことで、EC(電子商取引)業者の悩みであった物流環境が改善され、地方の消費市場の開拓に大手プラットフォーム事業者が注力する状況が整った。今後は多くのプラットフォーム事業者が地方市場開拓を推し進め、メーカー側はその恩恵を受けるための施策をどう考え、実行していくかが課題になるだろう。

 問題は後者である。

 実は中国では2020年は「全面的小康社会」の完成、すなわち、中国が総中流社会に突入する年となることが位置付けられている。19年そして20年は中国政府がまさにラストスパートをかけようとしている時期であるのだが、この「全面的小康社会」の達成に避けて通れないのが農村地区の貧困問題。その解決に中国政府も躍起になっている。

 それをうかがい知ることができたのがダブルイレブンを盛り上げたライブコマースに関する「通知」である。

 日本でもダブルイレブン関連報道でその様子が紹介されていたが、このダブルイレブン直前に中国のメディア管理部門である国家広播電視総局から出されたこの「通知」について触れるメディアは少なかったようだ。

 それが出されたのは10月29日。5項目からなるその内容は、主にライブコマースの綱紀粛正、虚偽・誇大広告や社会の品位を落とすような表現の自粛を求めたものであったが、その中で特に目を引いたのは、第3、第4条であった。

 第3条では「公益広告」の割合を増やすことを求め、そして第4条においては「ライブコマースには中国の貧困問題の解決においての役割を求める」内容であった。

 もう少し具体的に言えば「貧困地区で生産した農産物などをライブコマースによって沿岸部の発展エリアに販売し、それによって脱貧困を成し遂げる」というものである。

 言い換えれば中国政府が「ライブコマースを使って農村の経済状況改善を進める」ことを公に宣言し、プラットフォーム事業者に、そこへの協力を「指示」したようなものであった。

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