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中国・不動産事業のデジタル化が急進 “場”から生まれる付加価値提供 (2/2ページ)

 中国のマンション管理会社である深セン市保利物業は自社が管理するマンション居住者向けにスマホアプリ「田丁」を提供している。同アプリ上では、管理費の支払いや問い合わせはもちろん、スマート化されたマンションでの鍵の開閉や駐車場の料金確認を行うことができ、マンション居住に必須のアプリとなっている。また、保利物業のマンション居住者は、アプリ上での生鮮食品の購入、クリーニング・家電修理の依頼ができるなど、暮らしに関わるサービスをワンストップで利用できる。

 すなわち保利物業は、従来の「マンション管理サービスという価値」および「そのデジタル化による入居者体験」の提供にとどまらず、「住まいの上に成り立っている入居者の生活に一歩踏み込んだサービス」という新たな価値を提供することに成功している。このようにデジタル化されたマンション居住体験に慣れ親しんだ人々にとっては、もはやマンションの購入は単なる「住まいを買う行為」ではなく「暮らしを買う行為」だと捉えられている。

 新たな価値で稼ぐ

 不動産事業のDX・サービス化は、従来の“場”としての不動産価値を高めることはもちろん、新たな価値を生む有料サービスの提供などにより、不動産事業者は新たな収益源を得ることができる。また、さらなる展開の方向性として「不動産のサービス・プラットフォーム化」がある。サービス提供の仕組みをオンライン上で外部に公開し、外部のサービス企業が不動産利用者やそのデータにアクセスできるようにすることで、外部の力を借りながらサービス利用者の多種多様なニーズに対応し、プラットフォーム上で提供する顧客体験を進化させていくことができる。こうした変革期の不動産業界において、日本が中国の先行事例から学ぶ点もあるのではないか。

【プロフィル】栗山勝宏

 くりやま・かつひろ 1998年大手システムインテグレーター入社、2007年野村総合研究所入社。産業ITコンサルティング二部グループマネジャー。専門は業務改革を伴うシステム上流工程・導入支援、ICTを活用したCX(顧客体験)改革・新事業創造など。中小企業診断士。神奈川県出身。

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