国内

協議が進まないリニア「水」問題 国仲介で3者合意も進展せず (1/2ページ)

 【深層リポート】

 大井川の流量減少の対策をめぐり、静岡県とJR東海との協議が進まず、静岡工区だけ着工できていないリニア中央新幹線。今年になって国が仲介役となって新しい有識者会議を立ち上げる方針を打ち出した。しかし、すでに両者は2年以上にわたり県の専門部会の場で、工事の影響を受ける大井川の水問題を中心に協議を重ねている。令和9年の品川-名古屋間の開業予定まであと7年。両者の協議はなぜ進展しないのか。(田中万紀)

 静岡県とJR東海

 「こちらからの質問に素直に答えていただきたい。全く答えていない点も多くある」。6日に静岡県庁でリニア問題を所管する県幹部らが行った記者会見。リニア工事が水資源や環境に与える影響について正面から回答しようとしないJR東海の姿勢に、県幹部が苦言を呈した。

 一方でJR東海の宇野護副社長は9日、記者団に「(県への回答は)見ていただければ、書いてある通り。もともと地域にご迷惑をかけないということでやっている」と反論した。同社は県が投げかけた47項目の質問に半年近くかけてすべて回答。そのやりとりはすでに2往復した。

 それでも県側は同社の説明に納得しておらず、追加の質問を投げる考えだ。

 大井川の流量対策

 大井川は、流域住民約62万人の生活と産業に関わるすべての水を賄っている。しかし気候変動に加えてダムや水力発電所の建設が続いたことで、近年は渇水が頻発。リニアのトンネルは大井川の真下を貫通する計画で、地下水脈や地表の水量に何らかの影響が出ることは避けられそうにない。JR東海はトンネル工事にともなう湧水の全量を大井川に戻すことなどを表明したが、大井川の水量減少への懸念から静岡県や流域自治体が同意せず、着工の見通しが全く立っていないのが実情だ。

 一方でJR東海としては、令和9年の品川-名古屋間の開業予定は譲れない。同社の金子慎社長は昨年5月、会見で「開業遅れへの懸念」を口にして同県に着工への同意を促した。沿線他県からも「予定通りの開業を」と要望が出されるに至って国土交通省は昨年8月、調整役に名乗りを上げた。

 同年10月末、国と静岡県、JR東海の3者会談が実現し、「新たな協議の場」を設けることで合意したが、その協議がまたもや停滞。国交省担当者が静岡県の担当者を叱責したことに川勝平太知事が不信感を募らせ、「新たな協議の場」に農林水産省や環境省を加えることなどを要望したのだ。国交省は代替案として国主導で新たな有識者会議を立ち上げることを提案したが、3者合意から5カ月近く過ぎた現在も、どちらの会議も始動していない。

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