国内

協議が進まないリニア「水」問題 国仲介で3者合意も進展せず (2/2ページ)

 もつれた糸

 県と流域自治体の願いは、大井川の水を減らさないことに尽きる。JR東海も工事の環境への影響を最小限に抑える技術と経験を積み上げてきている。現状は互いに不信感が生じて身動きが取れなくなっているだけのように思えてならない。

 川勝知事はかねて「着地点はある」と明言している。静岡県とJR東海との関係がここまでこじれてしまった以上、仲介役の国が強いリーダーシップを発揮して、すれ違った議論を整理し、両者の立場に寄り添うことでしか、もつれた糸をほぐすことはできないのかもしれない。

【記者の独り言】

 リニア工事で大井川の水が減るという試算が示されたのは6年以上前。当時はリニア建設を揺るがしかねない大問題だとは捉えられていなかった。今でこそJR東海は、多くの資料を開示し、言葉を尽くして説明している。当初から現状の対応をしていれば、地元との関係がここまでこじれることはなかったはずだ。逆に、静岡県が早い段階で大井川の水量減に論点を絞って交渉すれば、JRとしても対策を講じやすかっただろう。初動でのボタンの掛け違いが悔やまれる。(田中万紀)

【リニア中央新幹線計画】

 最高時速約500キロで、東京(品川)-名古屋間を最速40分、東京-大阪間を最速67分で結ぶ。総工費は約9兆円の見込み。東京-名古屋間は、東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知の1都6県を通過し、駅は神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市に設置する計画。JR東海は、東京-名古屋間約286キロの令和9年の先行開業を目指して平成26年に着工した。大阪までの全線開業は当初計画では令和27年だが、最大8年の前倒しを目指して進めている。

【リニア中央新幹線をめぐる動き】

平成25年9月/JR東海が環境影響評価準備書の中で「大井川の水量が毎秒2トン減少する」と予測

平成26年3月/静岡県が「トンネル湧水の全量を戻す」ことを求める

平成26年10月/国が品川-名古屋間の工事計画を認可

平成29年10月/川勝平太知事が会見で「リニア新幹線は本県にメリットがなく協力は難しい」と発言。JR東海との対立表面化

平成30年10月/JR東海が「トンネル湧水の全量を大井川に戻す」と表明

平成31年1月/静岡県の専門部会で、県側とJR東海との協議始まる

令和元年5月/JR東海の金子慎社長が静岡工区の未着工による開業遅れの可能性に言及

令和元年9月/静岡県がJR東海に引き続き協議する47項目を提示

令和元年12月/JR東海が47項目への回答を完了

令和2年1月/国が新たな会議の設置を提案

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