高論卓説

他国から感染者の大量流入も… 島国・日本が見習うべきは「台湾プロセス」

 世界各国で新型コロナウイルス感染者数の減少を受けて、ロックダウン(都市封鎖)をいつ解除するかが大きな問題になっている。たとえ適切な治療法が確立しても、ワクチンなどによる集団免疫ができなければ「第2波」「第3波」のリスクがあり、容易なロックダウン解除は再度のパンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性が高い。政治的に見た場合、ロックダウンよりも解除の方が難しい。再度、大規模感染が発生すれば、経済を犠牲にしたロックダウンの効果が無に帰してしまう。再び尊い人命も失うことになる。

 同時にもう一つの問題として、国境の開放問題もある。自国内の感染者がゼロになっても、新たな感染者が他国から大量に流入すれば大規模感染が発生する可能性が高い。既に新型コロナは南半球にも波及しているため、季節性のウイルスであっても封じ込めは困難とみられており、一年を通じてどこかで大規模感染が起きる恐れがある。国境を開くとしても、一斉に開くことができず、米国での大感染がその典型であるが、経由地を通じての感染も考えられるため、容易に国境を開放できない。

 実はこの点においては、日本のような島国は有利であり、大陸はかなり厳しい戦いを迫られるものと思われる。欧州で起きた難民問題がその典型であるが、陸続きの地域を完全に封鎖することはできない。また、欧州に関しては、欧州連合の誕生により国境を越えた分業が進んでおり、多重国籍者も多いため、人の移動を完全に制限することは限りなく難しいといえる。

 このため、国により対処法も大きく異なると同時に回復までの時間に大きな差が生まれる可能性が高い。まず、日本などの島国に関しては、国内の感染者をゼロに持ち込み、その上で、内需の拡大を進め国内経済の活性化を図る必要がある。そして、同様に感染者ゼロが確認されるなどした安全な国との国境を段階的に開き、人の面でも経済の面でも連携を強めながら観光を含めた自由渡航を拡大させる。

 現在、台湾がそのプロセスに入っており、6月から徐々に域内移動と観光を拡大し、10月からは安全な国との間で観光も再開するとしている。日本も同様のアプローチが望ましいといえるだろう。

 それに対して、欧州の場合、このアプローチをとるのは非常に難しい。島国である英国は別として、大陸側は集団免疫を獲得するまで、第2波、第3波の到来を必然的に覚悟する必要がある。だからこそ、治療法や治療薬よりもワクチンの完成が望まれるわけだ。

 ワクチンに関しては、国内で産学協同の3つのプロジェクトが動いており、政府も補正予算で100億円の予算を計上して開発を支援している。このうち、早ければ7月までに治験を始められるプロジェクトもある。海外との間でもCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)を通じて、海外研究機関への支援と協力も行っている。米バイオ医療ベンチャーのモデルナは治験を開始しており、トランプ大統領は年内をめどに国内接種を行いたいとしている。

 集団免疫などにより安全に経済が再開できない限り、資源の需要は増えず、国際交易の遮断が継続する。長期化すれば企業の破綻が増加し、それが債券と株式に大きな影響を与える。当面の間、ワクチン開発の結果と情勢が市場を動かす一番の要素になると思われる。

【プロフィル】渡辺哲也

 わたなべ・てつや 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。愛知県出身。

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