中国共産党は、新型肺炎流行の影響で1~3月の経済が大きく落ち込んだことを受け、2008年のリーマン・ショック以来の大型景気対策の策定を決めた。5月22日に開幕した全国人民代表大会(全人代)に提出された「政府活動報告」は、積極的財政政策をより積極的に行うとし、今年の財政赤字は前年から1兆元(約15兆円)増、対国内総生産(GDP)比で3.6%以上とした。他方で、中国は政府・企業の債務比率の高さが問題となっており、金融リスクを回避しつつ、経済を安定軌道に戻すことは決して容易ではない。(アジア経済研究所・田中修)
「6つの安定・保障」
新型肺炎が深刻化するなかで、当初の中国のマクロ政策は、防護服、マスク、ゴーグル、関連薬品などを生産する企業への支援、生活必需品の供給の保障が中心であった。
しかし、中国共産党中央政治局常務委員が全員出席して、2月23日に「新型肺炎感染予防抑制と経済社会発展活動の統一計画手配会議」が開催され、マクロ政策は「経済運営が合理的な区間から滑り落ちることを防止し、短期的な衝撃が趨勢(すうせい)的な変化に転換することを防止しなければならない」とされ、経済の安定が重視されるようになった。
財政政策は、19年12月の中央経済工作会議で決められた「質と効率の向上」から「より積極的に成果を出す」に改められ、金融政策も「柔軟、適度」を「より重視」することとされた。
今年3月27日の党中央政治局会議は、「(新型肺炎の衝撃に)積極的に対応する包括的マクロ政策を早急に検討し、打ち出されなければならない」と、大型の景気対策を策定する方針を示した。
続いて、4月17日の党中央政治局会議は当面の経済政策の方針として、これまでの「6つの安定」(雇用、金融、貿易、外資、投資、予想を安定させる)政策を強化するとし、さらに「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧およびエネルギーの安全、産業チェーンとサプライチェーンの安定、末端組織の運営を保障する)という新たな内容が追加された。
全人代に提出された「政府活動報告」は、「『6つの保障』は、今年の『6つの安定』政策の注力点である。『6つの保障』の最低ラインをしっかり守ることで、経済の基盤をしっかり安定させることができる」としている。