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欧州文化をより深く知らないと…日本のビジネスは道を外しかねない (2/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 ヨーロッパ文化全般をリサーチする、ヨーロッパに拠点をもつ日本の研究機関が、ぼくが知る限りない。一部の機能をもっているところはあるだろうし、欧州の研究機関と提携しているところはあるだろう。しかしながら、欧州社会で現実に起きていることに対して、ズームインとズームアップの両方で説明するような機能を果たしている機関があるようには思えない。

 ぼくも欧州の話題を話した時によく言われるのだが、「そうした情報は日本にまったく入っていません」と日本に住んでいる人が話す。

 そうだろうと思う。頻繁に他国ローカル言語の情報をフォローしなければ、「自然と目に触れる」母国語の情報はそうそうあるものでもない。もちろん、それぞれの国の事情や言語により、他国情報の多寡はある。

 だが基本的に、多くの人はローカルなニュースへの接触が多い。あるいは好む。1万キロ離れた土地での悲惨な状況よりも、自宅に近い料理屋のメニューの変更に関心があるのが普通だ。

 つまりコンテクストの分からないところでのコトよりも、熟知しているコンテクストでの「微細な変化」に嗅覚は働き、それが働くこと自体に喜びを感じ、その楽さ加減を享受するのである。

 したがって、欧州で起きていることに日常的にフォローする環境がない限り、日本の企業が、あるいは人が知らないのは当たり前である。しかし、欧州の動向を知っておくべき企業や人がそのような環境を意図的に用意しないのは、大局的な見方をとるに不利である。およそ10数年前のぼくは、そのように考えていたのだった。

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