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カネやモノの動き減速 滞る経済のグローバル化 (2/2ページ)

 その象徴が「米国第一」を掲げるトランプ米大統領だ。トランプ政権は経済成長を続ける中国の産業政策を不公正だと批判し、日本や欧州連合(EU)にも矛先を向けてきた。通商問題で紛争仲介機能を担うWTOもやり玉にあげる。

 世界の貿易量を世界の国内総生産(GDP)に対する比率でみると、08年の約61%をピークに頭打ちとなっている。1970年代から続いてきた貿易量の増加は転換期を迎えている。

 ただし、冷戦終結後に加速したグローバル化が世界の経済発展を可能にしたことも事実だ。国連はグローバル化について「2000年に50兆ドルだった世界のGDPを16年の75兆ドルに引き上げることに貢献した」としている。グローバル化のひずみを資本移動や貿易を制限する反グローバル化で解決しようとすれば、世界経済は退潮しかねない。

 こうした中、EUを離脱した英国が日本やオーストラリア、ベトナムなどが参加する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加に関心を示すなど国際連携の新たな動きもある。今年から本格運用が始まった地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」も各国の自主性を尊重しながら国際協力を進める取り組みだ。

 米シンクタンク、新アメリカ安全保障センターのリチャード・フォンテーヌ会長は米誌フォーリン・ポリシーへの寄稿で「かつて各国を貧しくした孤立主義や保護主義とグローバル化を入れ替えることはばかげている」と指摘。グローバリズムの新局面では、より限定的な形の国際連携に関する議論が重要だとしている。(小雲規生)

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