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硬派の学術出版社が解散 大手が異例の「丸ごと引き継ぎ」を決めたワケ (2/2ページ)

 久保井さんによると、創文社が刊行した全書籍は約1800点。このうち、ちくま学芸文庫が7月に再刊した『叙任権闘争』(A・フリシュ著、野口洋二訳)や、角川ソフィア文庫に収録された『独裁の政治思想』(猪木正道著)など、他社から特に申し出があったタイトル以外の全書籍については、講談社学術文庫や講談社選書メチエなどの学術レーベルを持つ講談社が引き継ぐとしている。同社は現在、著作権者との調整を進めており、同意が得られた本については、注文を受けてから印刷する「プリント・オンデマンド版」などの形での出版を検討している。久保井さんは「講談社さんの懐の深さには感じ入っており、非常にありがたい。本を後世に引き継いでもらうことが私たちの願いで、他社にとっても先例になるのでは」と喜ぶ。

 長期にわたる出版不況下で、学術的に価値ある書籍を手掛けながら経営難に苦しむ小規模な専門書出版社は創文社だけではなく、今後も解散や廃業を選ぶ社が出るケースは十分に予想される。出版科学研究所の川瀬康裕研究員は、「解散する出版社が版権の引き受け手を探し、実際に大手出版社が手を挙げて丸ごと引き継がれたのは非常に珍しいこと」と指摘する。「名著といわれる書籍が、オンデマンド版であっても絶版を免れて残るのは良い話。今回のように大手各社が手を伸べるのはまれな事例で、これがそのままモデルケースになるとは考えにくいが、今後こうした形が続くといいなとは思う」と話し、幸運な一例として意義があるとみている。(文化部 磨井慎吾)

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