年明け以降の新型コロナウイルスの感染拡大と感染抑制に向けた都市封鎖措置などを受けて、1~3月の実質国内総生産(GDP)成長率は前年比6.8%減と四半期ベースで初のマイナス成長となるなど、中国経済は深刻な景気減速に直面した。しかし、その後の感染収束を受けた経済活動の正常化に加え、政府は5月末に開催した全国人民代表大会(全人代)において、財政および金融政策を総動員して景気下支えを図る姿勢を示した。結果、4~6月はプラス成長に回帰し、新型コロナの影響を克服したもようである。他方、足元の景気回復には死角もある可能性に注意する必要がある。(第一生命経済研究所 西浜徹)
サービス業も改善
新型コロナの感染拡大と感染抑制に向けた都市封鎖措置を受けて、中国経済には過去に類をみない下押し圧力が掛かり、今年1~3月の実質GDP成長率は四半期ベースで初のマイナス成長となった。2000年代以降の世界経済にとって文字通りの牽引(けんいん)役となってきた中国の景気減速は、世界経済の足かせとなるとともに不透明要因となることが懸念された。
しかし、4月初めには当初の感染拡大の中心地となった湖北省武漢市の都市封鎖措置が解除されたほか、5月末に開催された全人代では財政、金融政策を総動員して景気下支えを図る方針が示された。さらに、その後は欧米など主要国での感染拡大一服を受けた経済活動の再開により、輸出が押し上げられる動きも顕在化した。結果、4~6月の実質GDP成長率は2四半期ぶりのプラス成長となったほか、新型コロナの影響が顕在化する直前の昨年10~12月を上回る水準となるなど、影響を克服したもようである。
さらに、その後もインフラ関連をはじめとする公共投資の拡充に伴う投資拡大の動きを追い風に、製造業のみならずサービス業も企業マインドが改善しており、景気の底入れが進んでいる様子がうかがえる。また、減税や補助金などの消費喚起策を受けて、自動車販売台数は久々に前年を上回る伸びとなるなど、家計消費の底入れを示唆する動きもみられる。
株式は底堅い動き
しかし、家計消費全体の動向を示す小売売上高は7月現在においても前年を下回る伸びで推移しており、6月はいわゆる「6・18セール」の影響で押し上げ圧力が掛かっていたにもかかわらず、投資に比べて力強さに乏しい状況が続いている。こうした背景には、企業マインドの改善にもかかわらず雇用調整圧力がくすぶっており、家計部門の財布のひもが緩みにくい状況にあることも影響しているとみられる。
なお、過去の景気回復局面においては、不動産市場への資金流入を背景とする不動産投資の活発化が押し上げ圧力となる動きがみられたものの、政府は不動産市場のバブル化を警戒して全人代においても不動産投機をいさめる姿勢が示されていた。しかし、景気下支えに向けて中国人民銀行(中央銀行)が金融緩和にかじを切ったことに伴い、中国金融市場においても「カネ余り」とも呼べる環境が醸成された結果、余剰資金の一部は株式や不動産など資産市場への流入の動きを強めている。