高論卓説

新型コロナ感染で沈んだトランプ氏 米国民の心理を日本のリーダーは学べ (1/2ページ)

 米大統領選の結果は、現時点では最終確定はしていないものの、バイデン氏の次期大統領就任はほぼ確実となった。この結果は、米国民の多くが「自ら」選択した妥当な判断であった。日本の報道では、大統領選の大きな争点は、新型コロナウイルス対応と経済の両立、米中関係などの対外政策であるという分析が多かったように思う。その観点から言うと、「アメリカファースト」を掲げるトランプ大統領は現職の強みを生かし、圧倒的ではないものの、再選されるだろうという報道が多かったことにつながる。(細川珠生)

 しかし、今夏、約2カ月米国に滞在した経験からいうと、米国民の「トランプ離れ」は深刻度を増していた。それでも、8月に行われた民主・共和両党大会や、頻繁に流れるバイデン、トランプそれぞれのCMなどを見ていると、現職の強みは絶大であるとも思えた。その中で、現職に挑み、なおかつ高齢でもあるバイデン氏が勝利したことの意味は大きい。では米国民の選択の源はどこにあったのか。

 一つは、「分断」である。日本でも報道された「BLM(Black Lives Matter)」では、人種問題がクローズアップされていたが、BLMを機に、自分とは考えの違う人々を排除したり攻撃したりする心理に火がついてしまったかのごとく、人間関係がぎくしゃくする様子が見られた。米国の友人によれば、「Blue Lives Matterという別のBLMもある」という。Blue(ブルー)は警察官の象徴であることから、「いつも命がけで職務を果たしている警察官の命も大事」という主張だという。アジア系・南米系との人種間はもちろん、異なる所得層間、さらにはちょっとした考えの違いからも「自分と違うことは受け付けない」という人々の「分断」は、トランプ政権下の4年弱、まるであおられるように蔓延(まんえん)し、当の米国人でさえ、疲弊しきっていたのである。

 2つ目は医療保険である。公的医療保険のない米国は、低所得者向けの補助を除き、原則民間の保険会社に加入することになるが、保険料が高額である上に、医療機関にかかったときの費用も高額である。例えば、日本では症状があれば数千円でできるMRI検査も、数十万円請求される。病院に行くことを躊(ちゅう)躇(ちょ)する傾向は、新型コロナの感染者数や重症化・死亡者数の多さと無関係ではないと考えられている。保険料の支払いが困難になった失業者は、無保険状態になり、感染が止められない負の連鎖が生じると問題視されている。米国版・国民皆保険制度の「オバマケア」を廃止したトランプ氏への不満は想像以上である。

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