海外情勢

欧米主要紙に収入もたらす「中国折り込み新聞」、その脅威 (1/2ページ)

 【エンタメよもやま話】欧米で問題化「チャイナ・ウオッチ」

 今回は、中国当局が海外で仕掛ける“メディア戦略”についてご説明いたします。これまでは主にテレビ局が舞台でしたが、それ以外のメディアでも着々と進んでいます。

 なかでも、昨今、欧米で問題化しているのが、中国共産党傘下の英字紙、チャイナ・デーリーが発行する月刊の折り込み新聞「チャイナ・ウオッチ」です。チャイナ・デーリーは1981年6月に北京で設立。米国のニューヨークやワシントン、英ロンドン、ネパールのカトマンズなど、海外の主要都市で発行されています。その目的は、当然ながら、中国に都合の良い話を英語圏に広めることなのですが、そんな同社の“突撃隊”ともいえる媒体が「チャイナ・ウオッチ」なのです。

 この折り込み新聞、表向きは“広告”として欧米主要紙に何げなく折り込まれているのですが、内容は完全な中国のプロパガンダ(宣伝)。つまり中国側は、チャイナ・デーリー社を介し、自分たちに都合が良い解釈が満載のこの折り込み新聞を欧米など海外で普及させるべく、さまざまな名目で欧米の主要紙などに大金を投入しているのです。

 11月24日付の米FOXニュース(電子版)などによると、チャイナ・デーリー社が米大手紙などに対し、この折り込み新聞を入れてもらうための広告費や印刷費として、この半年間だけで約200万ドル(約2億円)を投入していたことが明らかになっています。

 外国代理人登録法(FARA)に基づき、米司法省に開示された活動内容や財務状況から判明したのですが、具体的には、今年の5月から10月までに、広告費として、ウォールストリート・ジャーナル紙に8万5千ドル、ロサンゼルス・タイムズ紙に34万ドル、米外交誌フォーリン・ポリシーに10万ドル、英紙フィナンシャル・タイムズに22万3700ドル、カナダ紙のグローブ・アンド・メールに13万2千ドルをそれぞれ支払っていました。

 また、印刷費の名目で、5月から10月までに、ロサンゼルス・タイムズ紙に11万ドル、ヒューストン・クロニクル紙に9万2千ドル、ボストン・グローブ紙に7万6千ドルをそれぞれ支払っていました。その総額は115万5千ドルで、100万ドルの大台を超えていました。

 こうしたチャイナ・デーリーの米国での支出は、2009年の上半期は50万ドルでしたが、19年後半には500万ドルと10倍に急増(今年2月18日付の英紙ガーディアン電子版など)。実際、ウォールストリート・ジャーナル紙には16年11月から今年4月までに、記事広告の名目で600万ドルがチャイナ・デーリー社から支払われていました。またワシントン・ポスト紙には16年後半から昨年10月までに460万ドル、交流サイトのツイッター社には16年から今年4月までに26万ドルがそれぞれ、支払われていました。

 こうした巨額の資金投入の最大の目的が「チャイナ・ウオッチ」の普及なのです。その発行部数は全世界で約400万部。折り込みだからと軽視できる数字ではありません。

 ロサンゼルス・タイムズ紙では今年7月から8ページの「チャイナ・ウオッチ」の折り込みを始めましたが、その内容は、中国の経済とビジネスの将来はバラ色であると解説。さらに、11月2日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が、世界保健機関(WHO)による新型コロナウイルス感染症の起源解明に中国政府が非協力的だと報じた後も、米国と中国は良好な関係を維持していると強調し、中国が新型コロナの感染拡大を封じ込める初動対応に失敗したことには一切、触れていませんでした。

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