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消えゆくか?北京の「小産権房」 アジア経済研究所・任哲 (1/2ページ)

 2019年から北京郊外の別荘地では立ち退き問題をめぐり、政府と住民がもめることが頻発している。地方政府が強権的なやり方で住民を追い出す行為は過去の報道でもよく見られる。しかし、今回の場合、住民側が守ろうとするのは全てが「小産権房(しょうさんけんぼう)」といわれるものだ。

 ◆格安の違法建築物

 小産権房とは、土地譲渡の手続きを踏まず、かつ正式な建築許可もない建物であり、いわば違法建築である。北京の不動産価格高騰により、00年代に入ると、市内中心部から遠く離れた郊外の物件が注目されるようになる。これを商機と捉え、郊外の農村では小産権房の建設ブームが起きた。高額な土地譲渡の手数料を納めてない分、通常の物件より格段に安いのが最大の魅力である。

 小産権房の建設を主導するのは村の幹部である。村人を説得し、一定規模の建設用地を確保した上で、デベロッパーを誘致する。建物は中低層のアパートがメインで、山間部では一戸建ての別荘が多い。無論、違法建築であるがゆえに、正式な不動産登録証明書はない。代わりに村の自治組織である村民委員会が証明書を発行し、購入者に何らかの担保を約束する形をとる。担保の内容がいかにせよ、購入者にとって小産権房は一種の賭けである。末端の行政では小産権房の問題を把握しているが、地元の経済発展に有利であることから村の行動を黙認していた。各種の要因が相まって、一時期は郊外の不動産取引の2割超を小産権房が占めていた。

 10年頃から、北京市政府は域内の小産権房の実態調査に乗り出し、建設に関わった村の幹部とデベロッパーを摘発しただけでなく、一部の建物も撤去した。しかし、大半の小産権房は壊されず、取引も続いた。そして、19年に再び小産権房を撤去する波がやってきたのである。なぜ、8年以上も放置された小産権房を今になって集中的に取り壊すのか。

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