真山仁の穿った眼

堀さんに、叱られる!? 人生の師、堀貞一郎が重視したホスピタリティ (2/2ページ)

真山仁
真山仁

 “安全”を世界に保証できる状況か

 だが最近の日本社会では、こうした安全への配慮が軽く考えられがちな気がする。

 例えば、今や何事においても「自己責任」の時代だ。「本人が、自分で責任を取る」なら基準を破っても致し方ないと考える人もいるかも知れない。

 一見成熟した社会のようだが、そんな考えがまかり通る施設に、ホスピタリィを提供する資格はあるだろうか――。

 普段は、温厚で、情に厚い堀さんだが、安全を重視する点については、頑固一徹だった。

 ここまで書けば、何を言いたいかおわかりかも知れない。

 「お・も・て・な・し」なる殺し文句で、五輪を招致した日本はいま、堀さんが絶対に譲れないと訴えた“安全”を世界に保証できる状況だろうか。

 天国の堀さんに叱られないように、いや、「おもてなし」としての五輪の名に恥じないために、われわれは何をどう決断すべきなのか。答えは自ずと見えてくるはずだ。

昭和37年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者とフリーライターを経て、企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で小説家デビュー。同シリーズのほか、日本を国家破綻から救うために壮大なミッションに取り組む政治家や官僚たちを描いた『オペレーションZ』、東日本大震災後に混乱する日本の政治を描いた『コラプティオ』や、最先端の再生医療につきまとう倫理問題を取り上げた『神域』など骨太の社会派小説を数多く発表している。初の本格的ノンフィクション『ロッキード』を上梓。最新作は「震災三部作」の完結編となる『それでも、陽は昇る』。

【真山仁の穿った眼】はこれまで小説を通じて社会への提言を続けてきた真山仁さんが軽快な筆致でつづるコラムです。毎回さまざまな問題に斬り込み、今を生き抜くヒントを紹介します。アーカイブはこちら

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