小曽根真×真山仁対談

(下)人生60年に、何を想う (3/3ページ)

SankeiBiz編集部
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 「円熟の世代」と言われるが…

 真山 還暦を過ぎると「円熟の境地に入る」と言われますが、小曽根さんはいかがですか?

 小曽根 僕は、無理ですよ(笑)。少なくとも、自分で円熟なんて分からない。それは、周囲が決めることじゃないかな。僕自身の中身は、いつまでも青いままだと思いますね。

 真山 円熟というと、なんだか濃厚で老練のような印象がありますが、私はちょっと違って、「削ぎ落とす」ような行為をしても原石を残せるようになる、自己アピールをしなくても、あるがままでいればそこに自分らしさが残る、という境地だと考えています。かっこ良く言うと、迷いが減る。

 小曽根 僕の場合、「自分の好き嫌いがはっきりしていく」感覚として捉えている境地ですね。あまり言い訳もせず「僕はこうなんです」とそこに置いて、あとは、受け手に委ねる。リスナーを今まで以上に信頼するということになる。

 真山 それは発信する側に、受け手を刺激し、想像力をかき立てる何かがしっかりとあるからできるんだと思います。きっと、それが円熟と呼ばれるのではないでしょうか。

 小曽根 なるほどね。でも、僕はそのあたりは考えずに、好きなことをやっていく。でも、その手法を変えることは恐れずにいたいと思います。

 ■小曽根真(おぞね・まこと) ジャズピアニスト。1983年、バークリー音大ジャズ作・編曲科を首席で卒業。米CBSと日本人初のレコード専属契約を結び、アルバム「OZONE」で全世界デビューした。ソロ・ライブをはじめゲイリー・バートン、ブランフォード・マルサリス、パキート・デリベラなど世界的なトッププレイヤーとの共演や、自身のビッグ・バンド「No Name Horses」を率いてのツアーなど、ジャズの最前線で活躍している。2003年にグラミー賞ノミネート。2011、国立音楽大学(演奏学科ジャズ専修)教授に就任。2015年には「Jazz Festival at Conservatory 2015」を立ち上げるなど、次世代のジャズ演奏家の指導、育成にもあたる。2020年春には、コロナ禍の緊急事態宣言中、53日間に及ぶ自宅からの配信活動「Welcome to Our Living Room」も話題となった。2021年3月に還暦を迎え、全国各地で「OZONE 60 CLASSIC x JAZZ」ツアーを開催する。主な日程は下記の通り。

3月25日(木) 東京:サントリーホール 大ホール

3月27日(土) 名古屋:愛知県芸術劇場コンサートホール

3月28日(日) 秋田:アトリオン音楽ホール

4月 3日(土) 大阪:ザ・シンフォニーホール

5月22日(土) 福岡シンフォニーホール  ほか

http://www.hirasaoffice06.com/artists/view/187?artist=Instrumentalists

 ■真山仁(まやま・じん) 小説家。昭和37年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者とフリーライターを経て、企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で小説家デビュー。同シリーズのほか、日本を国家破綻から救うために壮大なミッションに取り組む政治家や官僚たちを描いた『オペレーションZ』、東日本大震災後に混乱する日本の政治を描いた『コラプティオ』や、最先端の再生医療につきまとう倫理問題を取り上げた『神域』など骨太の社会派小説を数多く発表している。初の本格的ノンフィクション『ロッキード』を上梓。最新作は「震災三部作」の完結編となる『それでも、陽は昇る』。

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