経済インサイド

ルネサス工場火災が半導体不足に拍車 問われる日本の対応力 (2/2ページ)

 米国は売上高ベースでは世界の半導体シェアの約5割を握るが、工場を持たない企業が多く、生産能力べースだと10%強しかない。バイデン氏は中国を念頭に「価値観を共有できない国に調達を依存すべきではない」とも訴える。

 米国との対決姿勢を強める中国も、15年に策定した産業政策「中国製造2025」で25年の半導体自給率70%達成を目標に掲げ、巨額の投資を続ける。欧州連合(EU)は3月9日、域内生産する半導体の世界シェアを30年に2割に増やす目標を新たに発表した。

 日本でも経済産業省が3月24日、官民で供給網の強化を含む半導体・デジタル産業の戦略を議論する官民の検討会を立ち上げた。(【「国家の命運握る」】経産省会合、半導体産業強化へ総力支援)

 1988年に半分超あった世界の半導体産業における日本のシェアは、2019年には10%まで低下。シリコンウエハーなどの素材や製造装置では高い競争力を死守しているが、半導体で売り上げ10位以内に入っている日本企業は皆無だ。梶山弘志経済産業相は「日本だけが取り残されることがあってはならない」と危機感をあらわにする。

 ただ、財政が悪化する中での資金支援には限界があるほか、これまでシェア低下を食い止められなかった事実を踏まえ、政府支援に期待する業界関係者は少ない。検討会は5月ごろに方向性を示す方針だが、内容だけでなく政府の実行力も問われている。

 自動車生産、165万台減の試算も

 ルネサスの那珂工場で発生した火災の影響は、発生から10日以上が過ぎた現在もはっきりしていない。ただ、同社は自動車の走行を制御するマイコンの世界最大手だけに、顧客の自動車メーカーは一定の減産を余儀なくされる可能性が高く、日本経済への悪影響も避けられない見通しだ。

 ルネサスによると、火災以前から半導体が不足していた影響で、製造中の仕掛品を含む在庫は一カ月分しかないという。しかも火災が起きたN3棟は、先端品である直径300ミリシリコンウエハーに対応した生産ラインがある同社で唯一の建物。製品の3分の1は、他工場での代替生産や外部への生産委託ができない。製造装置を新たに発注するにしても、半導体不足の中で早期に調達するのは困難な状況だ。

 N3棟の月商は170億円規模で、全社売上高の3割弱を占めるという。販売機会のロスに、1台数十億円といわれる焼損した製造装置17台などの損害と合わせると、同社が失うものは少なくない。

 ルネサスは、2月に同業の英ダイアログ・セミコンダクターを6000億円超で買収すると発表したばかり。柴田氏は「(買収方針に)現時点で変更はない」と話すが、撤回に追い込まれる可能性もある。

 自動車生産への影響も避けられない見通しだ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、2021年度上半期の国内自動車大手の減産規模が165万台に上ると試算する。内訳はトヨタ自動車が65万台、ホンダが29万台、日産自動車が27万台。ある自動車大手は「在庫が切れ始める4月以降に生産への影響が出てくるだろう」と身構える。

 自動車産業は裾野が広い上、国の基幹産業でもあるだけに、日本経済への影響も懸念される。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、今年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率が年率換算で7・30%押し下げられると試算している。(井田通人)

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