疾風勁草

現代に蘇る合従連衡 日本は合従策を支える決意を (1/2ページ)

高井康行
高井康行

 秦の東進を防いだ合従策

 今の中華人民共和国の動きは、紀元前4世紀の秦の台頭期を思い起こさせる。大陸中央部(黄河流域から長江流域にかけての地域の意)の戦国時代、西方にあった秦が国力を増大させ、東進の気配を見せ始めたとき、他の六国(魏・韓・趙・燕・楚・斉)は、それぞれ自国の独立を保持するための策を必要としていた。それに応え、雄弁家として知られた蘇秦は合従(がっしょう)策を、後に秦の宰相となる張儀は連衡(れんこう)策を唱えた。

 合従策とは、六国が同盟して秦と対抗することにより秦の東進を阻止し、自国の独立を維持しようとするものであり、連衡策とは六国がそれぞれ秦と友好関係を結ぶことにより秦に支配されることを回避しようとするものである。

 蘇秦は六国の印綬を帯びて六国を同盟させ、よく秦に対抗して六国の独立を維持した。しかし蘇秦の死後、秦の宰相となった張儀の連衡策により六国同盟は個別に突き崩された。その結果、秦の東進を阻む壁には穴が空き、六国は順次秦に滅ぼされ、紀元前221年、最後に残されていた斉が滅亡して、大陸中央部は秦の始皇帝の支配するところとなった。

 地政学的に最も重要な位置にある日本

 21世紀の今、習近平指導部の支配する中華人民共和国は、東は東シナ海、南シナ海に進出、さらには西太平洋まで、西は一帯一路により中東、西欧にまで進出しようとしている。その勢いは今年3月9日、米上院軍事委員会でフィリップ・デービッドソン米インド太平洋軍司令官が「6年以内に中華人民共和国が台湾に侵攻する可能性がある」と警告を発するほど緊迫の度を増している。

 このような状況に対し、日米とオーストラリア、インドの4カ国は「クワッド」を形成してこれに対抗しようとし、英国、フランス、ドイツも南シナ海に艦艇を派遣する意向を示している。まさに、六国が合従して秦に対抗しようとした時代と同じ構図と言える。

 しかし、習近平指導部も、合従策が連衡策によって破られたことは百も承知であろう。現代の張儀に大活躍させるに違いない。張儀は秦の宰相であったが、現代の張儀は中華人民共和国にいるとは限らない。

 現代の合従策において、地政学的に最も重要な位置にあるのが日本である。日本列島は北海道(北方領土を含む)から沖ノ鳥島までおおよそ3000キロメートルにわたって、瓶の蓋のように大陸から東への出口を塞いでいる。

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