疾風勁草

歴史は韻を踏むか 台湾海峡・尖閣諸島周辺の平和状態を維持するために… (2/2ページ)

高井康行
高井康行

 領海侵入を繰り返す海警局の公船

 習近平指導部の中華人民共和国は、南シナ海では岩礁を埋め立てて軍事基地化し、台湾は核心的利益だとして、最近では1日に20機を超える戦闘機、爆撃機等を台湾の防空識別圏内に侵入させることもある。

 また、中華人民共和国海警局の公船は、頻繁に尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で領海侵入を繰り返し、日本の漁船を追い回しては、その海域で中華人民共和国が国家主権を行使しているかのような形を作っている。日米安保条約は、日本の施政権のある地域に適用されることになっているから、尖閣諸島に日本の施政権が及ばないとなれば、中華人民共和国が尖閣諸島に侵攻しても日米安保条約は適用されないこととなる。

 それに対しアメリカは、台湾関係法にもとづき台湾への軍事支援をする旨公約し、折に触れてその条項を完全履行する旨確認している。また、尖閣諸島についても、アメリカは、日本の施政権が及んでいるとして、日米安保条約が適用されることを確認している。

 このような状況の中、訪米した菅義偉総理とバイデン大統領との日米首脳共同声明では、

「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」

「米国はまた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認した」

「日米両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する」

「日米両国はまた、地域の平和及び安定を維持するための抑止の重要性も認識する。日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する」

「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」

(いずれも、外務省公表の仮訳からの引用)

 と宣明した。習近平指導部に、台湾関係法、日米安保条約や今回の日米首脳共同声明が確実に実行されると確信させることができれば、台湾海峡や尖閣諸島周辺の平和状態は維持されるであろう。歴史に韻を踏ませてはならない。

高井康行(たかい・やすゆき)
高井康行(たかい・やすゆき) 弁護士、元東京地検特捜部検事
1947年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、1972年に検事任官。福岡地検刑事部長、東京地検刑事部副部長、横浜地検特別刑事部長などを歴任した。岐阜地検時代には岐阜県庁汚職事件を、東京地検特捜部時代はリクルート事件などを捜査。福岡地検刑事部長時代、被害者通知制度を始める。1997年に退官し、弁護士登録。政府の有識者会議「裁判員制度・刑事検討会」委員を務めたほか、内閣府「支援のための連携に関する検討会」の構成員や日本弁護士連合会の犯罪被害者支援委員会委員長などを務めた。テレビや新聞でも識者として数多くの見解を寄せている。

【疾風勁草】刑事司法の第一人者として知られる元東京地検特捜部検事で弁護士の高井康行さんが世相を斬るコラムです。「疾風勁草」には、疾風のような厳しい苦難にあって初めて、丈夫な草が見分けられるという意味があります。アーカイブはこちらをご覧ください。

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