田中秀臣の超経済学

「政府と日銀の連合軍」でコロナ経済対策…苦境の業界や低所得層に対応を (2/3ページ)

田中秀臣
田中秀臣

 現在は、西村康稔経済再生担当相がコロナ特措法に基づく休業命令などに従わない飲食店に「金融機関を通じて働きかける」とした発言をめぐって、政権批判はかなり高まっている。日本経済新聞が「西村氏発言に金融機関困惑 飲食店への要請『無理ある』」と伝えるように、この西村担当相の提言はもともと「無理」があった。撤回して謝罪したのは当然だろう。ただし、飲食店への協力金の前払いなど迅速化・簡素化などの方針は維持し、拡充していくべきだ。

 そもそもコロナ禍での経済の落ち込みは、特定の業態と雇用形態に集中して生じている。それら特定部門の落ち込みがあまりにもひどく、経済全体の落ち込みも生みだしてる。株価の高値安定や、世界経済の回復を受けての製造業の改善だけを見ていてはダメだ。

 業態別でいえば、飲食・観光、雇用形態でいえば非正規雇用の人たち。低所得層の方々や地方経済の落ち込みも深刻だ。つまり、経済全体を見ているだけではなく個々の対応が必要だ。まさに細やかで、かつ大胆な経済対策が必要とされる。これを実現できるのは、冒頭での安倍前首相の発言通りに「政府と日銀の連合軍」しかない。

 ここでも政府・与党の動きは鈍い。自民党の下村博文政調会長は、低所得層を対象に10万円の給付金を支給する政策を提言した。一部では、それを次の総選挙の公約に入れると報じられている。下村氏の緊縮的ともいえる態度にはあきれるしかない。低所得層を住民税非課税世帯として、2800万人ほどだと推測できる。この方々に1人10万円を支給してもたかだか2兆8千億円である。現段階で約4兆円予備費が残っている。10万円の給付金を配ってもまだ1兆2千億円程度残る。医療体制の拡充、ワクチン接種のための予算などで使える分はまだ残る。

 つまり下村提案など、すぐに予備費で明日にでも実現するべきなのだ。予備費の使途で、立憲民主党などとの「約束」があるが、そんなものは国民の必要の前には意味はない。これだけでは当然不足だ。

 低所得層の生活支援のためには、コロナ禍とその影響が続く間、毎月1人5万円を持続的に支給するのが望ましい。これは消費を刺激するためではない。あくまで低所得層の生活を維持するためであり、消費でもローンの返済でも、あるいは(多額はできないだろうが)貯金でも使途はなんでもいい。財務省の緊縮主義は定額給付金の大半が貯蓄に回ったと批判するが、「生活支援」の意味がわかっていない。どんなおカネの使い方でもいいのだ。生活不安の解消のために利用すればいいだけである。

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