田中秀臣の超経済学

「政府と日銀の連合軍」でコロナ経済対策…苦境の業界や低所得層に対応を (3/3ページ)

田中秀臣
田中秀臣

 仮に2800万人に半年間、毎月5万円を配るとすれば、8兆4千億円。大した金額ではない。先の10万円支給は予備費ですぐに支給するので、もちろんこれは補正予算に計上する。合わせると1人当たり40万円を生活支援の給付金として配る。こう書くと「国民を励ますためにみんなに配る」「国民への謝罪に全員に配る」という人たちが出てくるが論外である。当たり前だが、生活に困っている人が最優先だ。

 ワクチン接種の進行とともにコロナ禍の終わりが見えてくるだろう。不確実性が低くなると、景気刺激政策が有効になる。昨年度の補正予算で計上されたGoToキャンペーンの再開や公共事業などが効果を発揮しやすくなる。

 ただし、予算をさらに拡充するべきだ。公共事業は防災や教育設備のインフラ投資などが中心になる。国ベースの公共事業だけではなく、今、予算が底をついている地方自治体への措置が必要だ。地方ベースの公共事業の原資など5兆円を計上したらどうか。

 消費減税もするべきだ。消費回復にこれほど効果があるものはない。多くの政治家や識者が一時的な消費税減税を主張しているが、これも本来なら恒久的な減税の方が効果がある。一時的か恒久的かで議論はあるだろう。一時的なら5%引き下げで10兆円程度の予算、恒久的なら2%引き下げで4兆円程度だろう。

 さらに飲食や観光を中心に昨年度の営業損失を補償する。そのときの基準は、現状のような前年比5割の売り上げ減という「高すぎてバカらしい」ハードルは撤廃すべきだ。理想は損失全額補助だ。予算は10兆円。ここまでで(恒久的消費減税として)だいたい27兆4千億円程度。これに雇用調整助成金や求職者支援金の拡充に2兆円程度を計上しても約30兆円の真水政策である。予備費も計上しておくことを忘れるべきでない。

 これらに加えて、日銀はインフレ目標を3%に引き上げるべきだ。また長期国債の買い入れ中心に、現状のイールドカーブコントロールに過度に傾斜した政策を変更すべきだ。最近の黒田東彦総裁はかなり金融緩和に怠けているというのが率直な評価である。

 やるべき政策はまだまだある。政府と日銀の連合軍こそがいま決定的に求められている。

田中秀臣(たなか・ひでとみ)
田中秀臣(たなか・ひでとみ) 上武大ビジネス情報学部教授、経済学者
昭和36年生まれ。早稲田大大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は日本経済思想史、日本経済論。主な著書に『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)など。近著に『脱GHQ史観の経済学』(PHP新書)。

【田中秀臣の超経済学】は経済学者・田中秀臣氏が経済の話題を面白く、分かりやすく伝える連載です。アーカイブはこちら

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