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NTT 攻めの雇用転換 65歳まで雇用延長、過去の“禍根”断つ

2012.6.29 05:00更新

希望者全員が65歳以上まで働ける企業

 NTTが来年度から、大企業として先駆けて希望者全員が65歳まで継続して働ける雇用延長制度を導入する。60歳以上の雇用継続を義務づける高年齢者雇用安定法改正案の審議が始まっていない状況下で制度転換に踏み切った背景には、人件費削減のために導入したNTT固有の雇用制度の“禍根”を断ちたいという経営陣の意思があったようだ。

 ◆改正法案に先行

 「当時は団塊世代を大量に抱えてやむを得ない措置だったが、(廃止に)めどがついてよかった」。22日付で会長に退いたNTTの三浦惺前社長は、雇用制度の抜本改革に道筋を付けたことで肩の荷を下ろした。

 三浦会長が指摘する「措置」とは、2002年前に導入した「50歳退職・再雇用制度」だ。対象企業はNTT東日本・西日本、NTTファシリティーズ、NTTコムウェアの4社。「4社のグループ全体で15万人前後」(労組)の大所帯で、その大半が同制度の対象となった。

 当時は携帯電話の普及で固定電話が売れなくなり、特にNTT東西の地域会社が大量の団塊世代を抱えていたこともあって業績が悪化。これに対応し、社員は50歳でいったん退職し、子会社で再雇用はするものの賃金は低下するという制度を導入せざるを得なかった。

 今年3月時点でも、同制度を選択して子会社に再就職した東日本と西日本の社員は2400人。50歳を迎える社員のほぼ全員が“選択”している。

 これに対しNTTが今回、労組に提案した雇用延長制度は、50歳退職・再雇用制度を廃止し、希望者全員を65歳まで継続雇用するのが柱。来年度の新卒社員から昇給率を低く抑える一方、60歳以上の会社側支給を現在の年収200万円強から、300万または400万円(熟練技能者)に引き上げる。また、成果・職責・地域加算などの諸手当を見直し、成果配分の幅を広げて「働きがいのある会社にする」(鵜浦博夫社長)のが狙いだ。

 社員からすれば、50歳で転籍となり待遇も下がるという従来の厳しい制度から、50代では年収が減少する可能性があるが、65歳まで働く場合は増加するという大幅な制度転換といえる。

 ◆レガシーの必要性

 鵜浦社長は、10年前の退職・再雇用制度について「利益を維持して継続的な投資を行うためだったが、大変つらい10年間を過ごした」と振り返った上で、「国の仕組みも変わるし、NTTの雇用構造が変わってきているから早め早めにやっていく」と、攻めの雇用への転換を表明した。

 制度変更の背景には、NTTの事業形態が持ち株会社経営に移行してから13年たって大きく変容したことも大きい。電話からインターネット、移動体通信に軸足を移してきた。鵜浦社長は「われわれのサービスもレガシー(伝統的なサービス)からIP(インターネット規格)の世界に移行中」で、東西地域会社などの経営も安定化。さらに、東日本大震災時に通信設備の修復などで熟練技術者が活躍したことで「レガシーはまだしばらく必要。ベテラン層にも引き続き継続的な業務を頑張ってもらう」必要性も強く感じた。

団塊世代退職も新卒採用にしわ寄せ懸念

 今回の雇用延長制度について、労組は7月11、12日に開く全国大会で議論。本格的な労使交渉は同月下旬から始まる予定だが、「雇用契約をいったん切るという事態は早く元に戻すべきだ」(労組幹部)としており、会社側の提案を受け入れる見通し。

 雇用延長をめぐっては、政府は厚生年金の支給開始年齢が2013年以降、段階的に引き上げられることに対応、希望すれば誰でも65歳まで継続雇用するよう義務化する高年齢者雇用安定法改正法案を3月に国会に提出。成立すれば企業は13年度から希望者全員の65歳までの雇用延長が義務づけられるが、審議日程は不透明。

 改正法案に反対する経団連は、高齢者の一律雇用延長が雇用悪化や経済の活力低下を招きかねないと懸念。高橋弘行労働政策本部長は「新卒採用にもしわ寄せがいく」と予想。大手鉄鋼メーカー幹部も「『希望者全員』は厳しいというのが本音」と打ち明ける。

 こうした中でのNTTの雇用延長制度。団塊世代の退職が進んでいるのは、他の企業も同じような状況にある。このため、NTTの決断が産業界の見方を変える可能性もありそうだ。(芳賀由明)

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