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世界席巻の“台湾のアップル” 日本復活の鍵は想像力
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エイスース本社の玄関に飾られたチップで作られたモナリザの“絵画”=台北市のエイスース本社(板東和正撮影) 【台北=板東和正】日本企業が世界で遅れを取るノートパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話)事業。パナソニックが欧州のスマホ事業の撤退を決定するなど国内の縮小が目立つが、台湾メーカーはIT王者、米企業に肉薄する勢いで成長を続ける。IT企業で“台湾のアップル”と称されるエイスース(ASUS)本社に7日訪れ、パソコン事業などを拡大させるための秘訣(ひけつ)を探った。
台北市の一等地に構えたエイスース本社。ロビーにはコンピューター・チップで作成されたモナリザの“絵画”が飾られ、米アップルのオフィスと同様、本社にプールや卓球台が設置されている。
「リラックスして新しいことを学べる環境を作ることで、製品デザインに求められる社員の発想力を磨ける。米企業と戦うために必要だ」。取材に応えたエイスース社員は、そう打ち明けた。
同社は液晶パネルの背面に別の液晶パネルがあり、ふたを閉じると、タブレット型端末になるウルトラブック「TAICHI」を発表。斬新な自社ブランドが功を奏し、米企業を追い上げる。
米調査会社IDCによると、2012年4~6月期パソコン世界出荷台数実績シェアは米ヒューレット・パッカード(HP)が15・7%と1位につけ、エイスースは6・9%で5位。同じ台湾のエイサーも4位に入り、台湾勢の強さを示した。日本メーカーは5位以内に入っておらず、「日本企業は台湾の相手と見なされていない」(証券アナリスト)との見方が広がる。
「スマホの技術面でアップルと並びたい」。7日、エイスースのマーケット担当者は、何度も強調した。スマホ事業はiPhone(アイフォーン)5を発売したアップルや、韓国サムスン電子が世界市場を席巻しているが、同社は、スマホとタブレット端末を合体させ、それぞれの映像や情報を共有できる新製品を発表。新市場を開拓して巻き返しを図る。
スマホ事業では「日本は台湾のような市場を新たに掘り起こすアイデアも技術も枯渇しており、勝てる要素がない」(アナリスト)のが実情。日本企業にとっても新商品で新たな需要を生み出す“想像力”が復活の鍵になりそうだ。