ニュースカテゴリ:企業
メーカー
鉄鋼大手、新技術で劣勢跳ね返すか 製鉄原料に水素、CO2削減に挑む
更新
COURSE50概要図 大手鉄鋼メーカーの新日鉄住金やJFEスチールなどが共同プロジェクトとして、高炉から出る二酸化炭素(CO2)を削減する新たな製鉄技術の開発に向けた実証実験に乗り出す。
実験は製鉄原料であるコークスの代わりに一部、水素を使うことで、CO2排出量の削減を図ることなどが目的。2030年の実用化を目指して13年度からの5年間で、国内の製鉄所内に小型の試験高炉を建設し、CO2の分離・回収技術との融合や高炉への水素の効果的な吹き込み方法も検討する見通しだ。ノウハウの蓄積を進め、50年までに国内製造業全体の4割以上を占める鉄鋼業界のCO2排出量30%削減を目標に掲げている。
プロジェクトは「COURSE(コース)50」。新日鉄住金とJFEスチールのほか、神戸製鋼所、日新製鋼、新日鉄住金エンジニアリングの5社と日本鉄鋼連盟が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として実施しているもので、主に炭素の代わりにコークスを製造する際に発生するガスに含まれている水素を使って鉄鉱石を還元する技術と、高炉から発生したCO2を分離・回収する技術の研究開発を行っている。
通常の製鉄過程では鉄鉱石に含まれる酸素を取り除くのに石炭を蒸し焼きにしたコークスに含まれる炭素を使っているが、これがCO2を排出する原因となっている。CO2排出は近代製鉄の“宿命“ともいえるが、プロジェクトではコークスに代えて一部、水素を使うことで、CO2排出量を抑制する技術の開発を進め、効果も確認され始めている。
今年4~5月にスウェーデンのLKAB社の試験高炉で操業試験を行ったところ、「5%程度のCO2排出量の減少が確認できた」(納雅夫副プロジェクトリーダー)という。新日鉄住金の君津製鉄所(千葉県君津市)で今年6月に始めた試験ではコークス製造時のガスに含まれる水素の増幅率を2倍にできることを確認。水素の濃度が高まるとその分だけ、コークスの使用量を減らせるため、CO2の発生量を抑制する効果があるとされる。
一方、高炉から発生したCO2の分離・回収技術の開発では、「すでに約99%のCO2回収率を実現している」(日本鉄鋼連盟)。
実用化に向けた今後の大きな課題となるのが、CO2回収コストだ。ただでさえ、円高で輸出環境が悪化している中、生産コストの増加は一段の収益悪化につながりかねない。プロジェクトではCO2を回収するには1トン当たり6000円程度かかるコストを3分の1程度の2000円まで下げることを目標に挙げる。
欧州債務危機に端を発した世界的な景気減速を受け、鉄鋼の生産量は足元では落ち込んでいるが、将来的には新興国の経済成長を背景に大幅に増加する見込み。世界の鉄鋼業からのCO2排出量は全体の3%程度を占めており、鉄鋼生産量が増加すれば排出量は増える。温暖化を防ぎ、持続的な経済成長を遂げるには新たな製鉄技術の開発が不可欠だ。
そんな中、日本の鉄鋼業界が培ってきた先進的な省エネ技術にさらに磨きをかけることは、実はビジネスの拡大にもつながる可能性を秘める。「環境に優しい鉄」というこれまでの印象を一変するさせるような付加価値付けを行うことにより、国内外からの受注増の期待も膨らむ。それだけに、COURSE50は円高の定着や新興国メーカーの台頭などを受け、厳しい価格競争を強いられる日本の鉄鋼メーカーが劣勢を跳ね返し、世界市場での勝ち残りを果たす“切り札”となりそうだ。