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中国リスク、日系企業の試行錯誤続く 計画一部見直しの動きも
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全面営業再開にこぎつけた「ジャスコ黄島店」=24日、中国山東省青島市(河崎真澄撮影) 反日デモで襲撃を受けたジャスコ、平和堂が相次いで営業を再開し、流通業を中心に日系企業の業務は正常に戻りつつある。多くの日系企業が中国事業を拡大する基本方針を変えていないが、政治的リスクに加え経済減速懸念などもあり、計画を一部見直す動きも出ている。日系企業の試行錯誤はしばらく続きそうだ。
平和堂は、営業を休止していた湖南省の百貨店3店を21日までに再開した。地元政府から「安全を守る」との確約を受けての再開で、警備員を増やし、建物のガラスを厚くするなど万全の体制を取った。現時点で混乱はなく、来春には同省に新店がオープンする。
カジュアル衣料チェーン「ユニクロ」は反日デモ後も出店を進め、10月末の店舗数はデモ前の8月末より20店以上増えた。計画通り年間80~100店のペースで出店し、将来は1千店体制を目指す。
一方で慎重な見方をする流通業も少なくない。12月に上海に出店する大手百貨店の高島屋は「売り上げは当面厳しいとみている」(担当者)と話す。来春に全館オープンする予定だが、黒字化目標を5年後とするなど、時間をかけて地元への浸透を図る。
大手コンビニエンスストアのローソンも、中国での新規出店が「想定通りに進まない可能性が出てきた」(幹部)とみる。2020年に1万店に拡大する計画で、主に地元企業のM&A(合併・買収)で行う方針だったが、交渉が難航する可能性もある。
ファミリーマートは中国経済の減速懸念を理由に、来年2月末までの新規出店計画を60店以上、引き下げた。16年2月末までに4500店とする目標は変えないが「今後1年は足場固めをする」(上田準二社長)。一方で東南アジアで4カ国目となるフィリピンへの進出を決め、収益の多様化を図る。
さらに中国事業を進める流通各社にとって頭が痛いのは、暴動などによる損害を補償する保険特約の条件が厳しくなりそうなことだ。
損保各社は反日デモを受けて休止していた新規受け付けを順次再開する方針だが、今後は保険料が上がるなどの可能性がある。今月から新規受け付けを再開した損害保険ジャパンは「過去の保険金支払い実績や業種などを踏まえ、個別に引き上げを判断する」と話す。
イオンや平和堂は今回の被害を保険で賄ったが、今後の損保各社の対応次第では、中国事業にブレーキがかかる恐れもある。