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世界で戦える日本の炭素繊維技術 海外勢追い上げも「そう簡単に追いつかれない」

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世界で戦える日本の炭素繊維技術 海外勢追い上げも「そう簡単に追いつかれない」

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炭素繊維の世界需要見通し  自動車用の材料や部材として炭素繊維の本格採用が始まりそうだ。帝人は今月、米ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発した炭素繊維の成形加工時間を大幅に短縮した新製法の量産技術を確立する設備を稼働した。東レや三菱レイヨンはすでに海外の市販車向けに供給を始めているが、帝人の新技術によってコスト低下競争に弾みがつき、量販車への採用も視野に入る。

 自動車メーカーは燃費向上のため車体軽量化を進めており、一大市場が誕生する可能性がある。日本勢が世界シェアの約7割を占める炭素繊維が自動車用途で先行できれば、さらなる優位性を確立できそうだ。

 加工時間を大幅短縮

 「量を考えれば、やはり自動車向け。量販車で採用されれば、(市場の飛躍に向けて)大きな突破口になる」。帝人の担当者はこう強調する。

 同社は今月4日、松山事業所(松山市)内で試験装置の稼働を始めた。炭素繊維と樹脂を混合させた材料の連続一貫生産がこれまでの10分の1の、1分以内に抑えられる技術だ。昨年、GMと共同開発したもので、GMが実験を進めた上で、量販車への搭載を検討していく。

 帝人は、GMが2015年以降にも量販車への部材や部品として採用を検討していることから、15年までに今回の新製法を使った年5000トン規模の量産工場を北米で建設することも検討中だ。

 最大手の東レは昨年、独ダイムラーと炭素繊維複合材料の合弁会社を設立。今年4月に発売されたメルセデス・ベンツの高級車「SLクラス」向けに部品供給を始めた。東レは航空機用では米ボーイングの最新鋭旅客機「787」向けに炭素繊維複合材料を供給。自動車用の需要拡大や、世界シェアの8割を持つガスタンク用でも高圧のシェールガスタンク向けの供給拡大などを見込み、「2020年度には(炭素繊維事業の)売上高を(11年度比4.3倍の)3000億円にしたい」(日覚昭広社長)と意気込む。

 ネックはコスト高

 一方、三菱レイヨンも昨年、独BMWグループと合弁会社を設立。今年6月からBMWの電気自動車「i3」向けに炭素繊維材料の供給を始めた。

 11月には炭素繊維を使ったレーシングカー部品の設計・製造・加工会社「チャレンヂ」(埼玉県狭山市)を完全子会社化。「多様な要求に対応できる技術と開発力を持つ」チャレンヂを通じて、BMW以外への採用拡大を目指す。

 炭素繊維の最大の売り物は、鉄の10倍の強度を持ちながら、重さは4分の1程度しかないこと。自動車や航空機などで採用されれば車体や機体を軽量化でき、燃費改善につながる。

 このため、東レでは世界の需要量は11年の3.7万トンから年率16%と2桁の成長が続き、20年には4倍近い14万トンに上ると予測。このうち、自動車を含めた産業用の伸び率が最も大きいと見込んでいる。

 ただ、市販車に使われ始めたとはいえ、まだコスト高がネック。実際、ベンツやBMW、国産車の一部も採用は高級車のみにとどまる。量販車に広く採用されるためには、一層の効率化が欠かせない。

 自動車向けでは、海外メーカーも動き始めた。米ダウ・ケミカルは今年4月、フォード・モーターと炭素繊維を使った自動車部品の共同開発で合意したほか、ダウはトルコの繊維大手アクサと合弁で、10億ドル(約820億円)を投じて世界最大級の炭素繊維工場をトルコに建設し、低コスト化を目指している。

 ノウハウ蓄積 追い上げる海外勢に対抗

 それでも、海外メーカーの追い上げについては国内各社とも「そう簡単に追いつかれない」と口をそろえる。東レは1971年、帝人子会社の東邦テナックス(当時は東邦レーヨン)は74年、三菱レイヨンは83年にそれぞれ炭素繊維の生産を開始。30~40年の製造経験を持ち、「もうからなかったが日本勢だけが投資を続け、ようやく芽が出てきた」(三菱レイヨン)という製造ノウハウの蓄積があるからだ。

 短期間での利益獲得を重視する欧米メーカーにはない「日本的経営だからこそ成長できた分野」(同)との自負がある。

 しかも、国内大手は海外に生産拠点を持ち、グローバルな供給体制を築いている。国内メーカー同士も「ライバルながら、同じ“釜の飯”を食う仲間意識もある」(大手担当者)と、協調して海外勢に対抗する姿勢もあると明かす。

 かつて産業界の牽引(けんいん)役だった半導体や家電製品などでは国際競争に敗れ国内工場の閉鎖や事業縮小が相次ぐ中、炭素繊維は日本が世界的に優位に立つ数少ない有力産業。それだけに、各社とも海外には負けられないとの気概は高い。(豊田真由美)

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