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【フォーカス】ダイハツ(下) 将来を占う大勝負 現地に根差した開発深掘り

ニュースカテゴリ:企業の自動車

【フォーカス】ダイハツ(下) 将来を占う大勝負 現地に根差した開発深掘り

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 インドネシア専用車を投入

 2005年以降、年4~6%台の高い経済成長が続き、いよいよ一家に1台の「マイカー時代」を迎えようとしているインドネシア。首都ジャカルタ郊外の工業団地で10月、ダイハツ工業の新工場が稼働を始めた。

 同社はトヨタ自動車とともに、いち早く現地に進出。両社で5割の市場シェアを握り、「第2のマザー市場」ともいえる収益源を築いた。だが、新車販売台数でタイを抜き、東南アジア最大の市場に昨年躍り出た同国には今、世界の自動車大手がこぞって攻勢をかける。貴重な成長市場の地盤を守り抜けるか、ダイハツの将来を占う大勝負が始まろうとしている。

 貢献度をアピール

 「当社はインドネシアの自動車産業の発展に責任がある。インドネシアの方々に、快適でエコなクルマを届けていきたい」

 9月21日、ジャカルタモーターショーで、伊奈功一社長はインドネシア向けに専用開発した5人乗りの新型小型車「アイラ」を紹介しながら、現地への貢献の意気込みをアピールした。

 インドネシアの1人当たり国内総生産(GDP)は、「二輪車から四輪車への乗り換えが進む」とされる目安の3000ドルを10年に突破した。「かつての日本のように中間所得層が膨らみ、モータリゼーションが始まる」(伊奈社長)とみて、自動車各社が強い期待を寄せる。

 11年度の新車販売台数は前年度比15%増の91万8000台と伸び、今年も100万台突破のペースで市場の拡大が続く。

 この追い風がダイハツの業績にもたらす効果は大きい。12年3月期に、単体で3.1%の売上高営業利益率が、連結では7.1%と跳ね上がるのはインドネシア事業の収益力の牽引(けんいん)があればこそだ。

 インドネシアの新車販売は、今年度上期(4~9月)も前年同期比約18%増の8万1000台と好調で、国内の軽人気との両輪の相乗効果が高まったことで、12年9月中間連結最終利益は上期として過去最高の444億円に達した。

 リーマン・ショック後、同社は不採算の海外市場からの撤退を繰り返してきた。

 07年に進出した中国では、知名度不足などから思うように販売が伸びず、10年に撤退。長引く円高で販売低迷が続く欧州事業にも見切りを付け、来年1月で新車販売を終える。

 新興国の市場開拓で、中東やアフリカには日本から完成車を輸出しているが、現在、海外販売の9割は生産拠点を構えるインドネシアとマレーシアの2カ国で占める。

 インドネシアへの進出は1968年。92年から現地企業との合弁会社で完成車を生産し、トヨタにもOEM(相手先ブランドによる生産)供給している。昨年の新車販売シェアは首位トヨタが35%、2位のダイハツは、日本の実績(13%)を上回る15%で、現地でのトヨタグループの存在感は群を抜いている。

 もっとも競合他社の追い上げも激しい。ホンダは既存工場の増強と新工場の建設を進め、14年に生産能力を3倍増の20万台に引き上げる。新興国攻略で専用ブランド「ダットサン」を復活させる日産自動車も、15年までに330億円を投じ、工場や販売店網を強化する。韓国・現代自動車やインドのタタ・モーターズなども、虎視眈々(たんたん)とシェア拡大を狙う。

 2000人から聞き取り

 迎え撃つダイハツの基本戦略は徹底した現地化。その象徴的な存在が、「インドネシア発、インドネシアのための車」と銘打つアイラだ。

 アイラは、軽乗用車「ミライース」の低燃費・低コスト化技術を応用しながら、開発は現地の合弁会社が主導した。

 大小1万8000の島からなる国土を区切ってユーザー約2000人に聞き取りを行い、装備や耐久性などのニーズを設計当初から反映させた。排気量は、インドネシア政府が検討している低価格エコカーへの優遇政策に適合するよう1000ccに抑えた。

 アイラを生産する新工場には来年、テストコースやデザインセンターも完成する予定。現地ニーズに根差した開発の取り組みを、さらに先へ進めることで競合を引き離すシナリオだ。

 「現地ニーズに基づき、走りとデザインに磨きをかけた低コストだけではない車づくり」(金子達也取締役専務執行役員)を深掘りするというダイハツの戦略が、開花期を迎えるインドネシアのマイカー市場の大競争で、どこまで競争力を発揮できるのか。

 東南アジアの最大市場を制することができれば、新興国戦略の次の展開や国内依存からの脱却の道筋も見えてくる。(山沢義徳)

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