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テレビ需要先食いは計算外か? パナソニック、シャープの経営直撃

ニュースカテゴリ:企業の電機

テレビ需要先食いは計算外か? パナソニック、シャープの経営直撃

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薄型テレビの国内出荷台数の推移  平成24年は日本のデジタル家電業界にとって厳しい1年となった。関西の雄、パナソニックは24年3月期の連結決算で過去最悪の7700億円の最終赤字を計上し、25年3月期も7千億円超の赤字に陥る見込みだ。シャープも24年3月期の連結決算が過去最大の3700億円の赤字となり、今期の最終赤字も4500億円と過去最大を更新する見通しだ。両社の不振の主因は薄型テレビ事業の低迷にある。

 22~23年の液晶、プラズマなど薄型テレビの国内出荷台数は、テレビの地上デジタル放送への完全移行(23年7月)まで前年実績を大きく上回り、年間2500万台市場を形成した。

 しかし、地デジ化特需が終わった23年8月以降、国内出荷台数が激減。今年7月に至っては85%減と散々たる結果だった。シャープの町田勝彦相談役は11月、記者団に対し「5~7月の液晶テレビの落ち込みが前年比7割ダウンで、これに伴って大きく価格が下がった。あそこまで落ちたのは計算外だった」と嘆いた。

 世界市場で韓国のサムスン電子、LG電子などと激しい価格競争にさらされてきた日系メーカーの“最後の砦”、国内市場の「消滅」は各社の体力を一気に蝕んだ。パナソニックは、4千億円超を投資した兵庫県尼崎市のプラズマパネル工場の大部分が23年度中に操業を停止。24年3月期決算に操業停止に伴う巨額損失をはき出した。

 シャープは、約4千億円を投じた堺市の大型液晶工場の稼働率が一時3割にまで低迷。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との共同運営に追い込まれた。テレビ販売の不振で在庫の価値も下がり、25年3月期決算で多額の評価損も余儀なくされた。

 家電量販店関係者は「地デジ移行は政府のエコポイント制度と相まって、明らかに需要の先食いだった。パナソニック、シャープともそれを見通せなかったはずがない」と、両社の経営判断に首をかしげる。

 デジタル家電の主役はテレビからタブレット端末やスマートフォン(高機能携帯電話)に移り、米アップルとサムスン電子のライバル対決に米グーグルなど非製造業が割って入っている。

 甲南大学の加護野忠男特別客員教授は「日本企業は、値段のわりに性能が良いというコストパフォーマンスで支持を広げてきたが、追随者(韓国勢)が出てきて成功は続かなかった。コスト削減より、製品の値上げを正当化できる価値の付加を考えるべきだ」と話している。(南昇平)

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