ニュースカテゴリ:企業
金融
カードにもリストラの足音 富裕層の奪い合い激化、“メーン”確保で生き残り
更新
クレジットカード会社による富裕層の“争奪戦”が激化している。カード市場が成熟するなか、利用する金額、頻度とも高い優良顧客の獲得が欠かせないからで、カード各社は航空や鉄道会社、百貨店などと提携を強め、ポイントサービスで顧客の囲い込みを狙う。利用者もポイントを効率的にためるため、日常の決済を特定のカードに集約しつつあり「富裕層の奪い合いでメーンカードと使われないカードが鮮明になり、カードのリストラが一段と進む」(業界関係者)とみられる。
日本クレジット協会によると、昨年3月末時点のクレジットカード発行枚数は前年比2.2%減の3億2164万枚。カードを1人当たり3枚持つ計算で、「発行枚数が今後、劇的に増えることはない」(同協会)。
一方、公共料金や病院などカードを使える場所が拡大、利用金額は増加している。中でも、ゴールドカードやプラチナカードの使用が増えており、使い勝手が良ければ富裕層のメーンカードになりやすい。
三菱UFJニコスは昨年12月に「JAL アメリカン・エキスプレス・カード」の入会申し込み受け付けを開始した。JALカードとしては6年ぶりの発行で、24時間年中無休対応のコンシェルジュサービスなどがついたプラチナカードは初めて。長期的な円高を背景に、海外旅行客や海外出張するビジネスマンの需要増を見込んだが、「想定以上の反響」(同社)に手応えを感じている。
同社は大学との提携も強化。昨年12月には早稲田大学と提携し、プラチナカード(年会費2万1000円)の会員募集を開始した。2010年の慶応大、昨年10月の明治大に続き3校目。利用額の一部が奨学金制度に充当されることもあり、愛校心が強く、社会の第一線で活躍する卒業生の獲得を目指す。
島貫和久常務執行役員は「仕事にも消費にも積極的なお客さまに支持を得るためには、キラーコンテンツと付加価値の高いサービスの両立が不可欠」と話す。同社は今後も、約4000万件の口座を抱える三菱東京UFJ銀行など三菱UFJフィナンシャル・グループの顧客基盤を軸に、富裕層獲得に注力する。
三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友カードも昨年末、「ANA VISA プラチナ プレミアムカード」の募集を始めた。年会費は同社としては最高額の8万4000円、業界でも最高水準だ。年会費を抑えたゴールドやプラチナカードが増えるなか、高品質にこだわり、高級飲食店のコース料理の無料提供など独自サービスを充実させた。
富裕層“予備軍”の開拓も進める。18~25歳を対象にしたカードを昨年4月に新設。25歳で自動的に20代専用のゴールドカードに切り替える仕組みにし、いち早く自社カードをメーンにしてもらう狙いだ。
カード業界に詳しい富国生命投資顧問の橋本浩シニアアナリストは「堅実な人が多い若い世代はクレジットカードを賢く使う人が多い。利用金額は増える」と指摘する。
一方、ジェーシービー(JCB)は中小企業や個人事業主のオーナーとその役員向けに「JCBプラチナ法人カード」を昨年4月から扱っている。
eコマース(電子商取引)の広がりで、企業間取引や税務申告、経費の計上などをカードで決済する機会が増えている。個人用のゴールドやプラチナカードを持っているオーナーのなかで、業務用にもステイタスを求める人が増えているのに対応した。
接待や出張時の交通、飲食店の手配など、プラチナカードならではのサービスを「秘書代わりに」(同社関係者)利用するケースが目立つという。
クレジットカード業界は、貸金業法の改正に伴う総量規制と上限金利の引き下げで、収益の柱だったキャッシングの利用者が激減し、売り上げを直撃。利用者の減少した赤字カードを廃止する一方、従来は招待制が大半だった上位カードの会員を一般募集するなどショッピングの手数料収入で収益の確保を迫られている。
一方、メガバンクは企業向け貸し出しの鈍化や住宅ローンの金利低下で国内での業績が伸び悩む中、いまや傘下のカード会社の利益はグループ全体の主要な収益源。カード会社と二人三脚で優良顧客の開拓に注力、現役と将来の富裕層を囲い込めるカード開発に余念がない。
支持されないカードは撤退しかないだけに、「利用単価が高い顧客の獲得競争はさらに激化する」と橋本氏は予想する。(小川真由美)