SankeiBiz for mobile

“スーパーエココンビニ”人工知能が制御 ローソンが技術結集

ニュースカテゴリ:企業のサービス

“スーパーエココンビニ”人工知能が制御 ローソンが技術結集

更新

地下水を天井のルーバーに放射して室温を調節している  コンビニエンスストア大手のローソンは、省エネ技術を結集した“スーパーエココンビニ”を2012年12月7日、神奈川県海老名市にオープンした。

 建設工法を見直して太陽光や地中熱など自然エネルギーを活用するとともに、人工知能が各機器をコントロールすることで店舗の電気使用量を約30%削減できるという。同店での実験データをもとに他店でも省エネ設備の導入を進めるほか、新規設備の開発にも生かす。

 スーパーエココンビニ「ローソン海老名上今泉二丁目店」は、見た目は一般店舗とほぼ変わらないが、建築構造から省エネに取り組んだ。プレハブ工法を採用して鉄骨量を従来比約30%削減し廃材もゼロ。工期も短縮されたことで建築にかかる電気代も削減できた。

 工法のヒントとなったのは、一昨年3月の東日本大震災以降に被災地で出店したプレハブの仮設店舗だった。建設企画部の江口啓司部長は「限られた資源を活用して、いかに早く商品を届けるかという発想が根付いた」と話す。

 建築構造ではほかに、同社で初めて「高断熱外壁」を設置した。店舗の外壁の外側に張ったシート状のもので、一見すると簡素だが店舗の壁との間に空気層をつくりだすことで断熱効果を発揮する。ガラスも遮熱性の高いものを使用した。

 屋上には年間約1万8000キロワットの発電が可能な太陽光パネルを並べた。店舗で使用するほか、緊急時や電力使用のピークシフトのために蓄電し、余剰分は売電も行う。また、自然光を取り入れるため、店舗上部に窓を設置し空調機の使用を抑える。

 店舗敷地内の地面にも省エネ技術が埋め込まれている。ヒートアイランド対策として舗装の下に、年間を通して水温が約17度と安定している地下水を浸透させ、蒸発帰化させることで温度上昇を抑制する。

 地下水は店内の冷暖房システムにも活用している。店内に入ると天井一面に、風向きなどを変える羽根状の板「ルーバー」が取り付けられている。

 地下水の安定した熱を天井に設置した金属パネルに伝導させて、このルーバーで放熱して室温を調整する。地中熱を利用した冷暖房システムは他社で導入しているところもあるが、「ルーバーを使うことで効率的に放射することができる」と江口氏は強調する。

 店内の冷蔵ケースはノンフロンの自然冷媒で、排熱は夏場は店外に、冬場は店内に循環させる。

 こうした一連の省エネ機器を、東京大学生産技術研究所が開発した人工知能システムが自動制御する。小売り店舗ではこれまで、「スマートセンサー」を導入して店舗内の電気使用状況を“見える化”する動きは広まっていた。

 ただ、「見えた後にどうするのが最適なのかを各店舗で判断するのは時間も手間もかかってしまう」(江口氏)のが課題となっていた。同研究所の馬郡文平特任講師は「24時間営業のコンビニエンスストアで人工知能システムを導入するポテンシャルは高い」と同店での実験結果に期待する。

 ローソンで年間に排出する二酸化炭素(CO2)は約70万トン。このうち85%は店舗で使用する電気によるものだという。同社では既存店でも広くLED(発光ダイオード)照明を導入するなど省エネを進めている。(金谷かおり)

ランキング