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日韓企業の家電格差なぜ生じた? サムスン幹部「シャープには勝ったも同然だ」

ニュースカテゴリ:企業の経営

日韓企業の家電格差なぜ生じた? サムスン幹部「シャープには勝ったも同然だ」

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【日の丸家電 再生への道】(上)

 パナソニックなど テレビめぐる隘路

 1月8日。米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、パナソニックの津賀一宏社長が発した言葉に、国内外の記者らはどよめいた。

 「将来、パナソニックは自動車メーカーになるかもしれません」

 冗談を交えた発言ではあったが、米ゼネラル・モーターズ(GM)と自動車用情報システムの開発提携を公表した直後の会見だっただけに、その言葉は何ともいえない重みを含んでいた。

 パナソニックの自動車関連事業の売上高は、2013年3月期で約7400億円(見込み)。全部門の中でも唯一伸びている成長事業で、GM以外の自動車大手との連携も模索する。

 サムスンに完敗

 経済産業省によると、2010年の家電の製造品出荷額は約8兆円だが、自動車は約47兆円。「家電で利益を生み出せなくなったメーカーの魅力的な食いぶちになる」(証券アナリスト)との期待は大きい。自動車分野をはじめ、家電各社が注力し始めているのが製品の値崩れが少ない企業向けのビジネスだ。

 12年3月期連結決算で、パナソニックが7721億円、ソニーが4566億円、シャープが3760億円と、いずれも過去最悪の最終赤字に転落した。

 一方、韓国のサムスン電子が今月8日に発表した12年12月期の通期営業利益は29兆100億ウォン(約2兆4000億円)前後の見通しで、「今や家電分野でサムスンと真正面から戦える日本企業はいない」(製造業幹部)。

 なぜ、日韓の間にこれほどの格差が生じてしまったのか。要因は約10年前にさかのぼる。

 「これでシャープには勝ったも同然だ」。04年にシャープが巨費を投じて亀山工場(三重県)を稼働させ、液晶テレビの生産に踏み切ったのを知ったサムスン幹部はこう述べ、笑みをみせたという。

 サムスンは液晶価格が下落することを察知し、シャープの判断が誤った過剰投資になると予測。シャープが亀山に、パナソニックがプラズマテレビへの過剰投資に傾倒する一方、サムスンは業界に先駆けてスマートフォン(高機能携帯電話)の開発を進めていた。

 「韓国企業には強力な営業力と資金によって未来のトレンドを掘り起こす力があった」。サムスン関係者はこう分析する。

 韓国企業はデジタル技術の進歩による家電の汎用(はんよう)化と通貨(ウォン)安を武器に世界を席巻してきた。

 これに対し、日本の家電各社は韓国勢をしのぐ技術力を持ちながら、それを生かすことができないという隘路(あいろ)に陥っている。高収益で業績のV字回復に結びつく新たな事業領域は見つからず、結果的に脱家電どころか、赤字を垂れ流すテレビからの脱却すらできていないのが現実だ。

 ソニーは、CESで「4K」と呼ばれる高解像度の有機EL(エレクトロルミネッセンス)テレビを他社に先駆けて発表。平井一夫社長は「有機ELテレビで常にソニーは業界をリードしてきた」と、商品化時期が決まっていないにもかかわらず、自画自賛した。シャープも「テレビ事業は捨てられない」(同社幹部)と中途半端な姿勢が浮き彫りになった。

 「テレビが家電の主役ではないといっても、(脱テレビは)社内では反発の声が上がる。ましてや脱家電など絶対に受け入れられない」。パナソニックのある幹部は、苦しい胸中を打ち明ける。最先端技術を持ちながらも、それを収益という結果に反映できない「焦り」と「あきらめ」が漂う日本企業は、赤字を止めることができない。

 CESの会場で、家電製品が「救世主」とはなれない事実を何度も訴える津賀社長はこうつぶやいた。

 「うちの家電部門の売上高は社内全体の3分の1しかないんですよ」

 韓国勢との直接対決に敗れ、巨額の赤字にあえぐ日本の家電メーカー。日本企業の復活には何が必要なのかを模索する。

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