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人として成長促す「親孝行月間」 優しい社員を増やすフジ住宅
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毎年4月1日、「親孝行月間」で1万円の入った寸志が全社員に支給される=大阪府岸和田市(香西広豊撮影) 大阪府を中心に分譲住宅事業などを手がけるフジ住宅は、毎年4月を「親孝行月間」と定めている。全社員に“金一封”が手渡され、親孝行のためならどう使おうと自由。そこには「一社会人である前に、一人の人間として立派であれ」という社員へのエールが込められている。ともすれば、人を押しのけてでも“結果”で勝負するのがビジネスの世界。もちろん、それを一概に否定するわけにはいかないが、人として最も大切なものは何か、とこの制度は社員に問いかけている。
「自分の家族を大切にできないような社員が、取引先を大切にできるはずがない。感謝の気持ちを常に持ってほしい」
「親孝行月間」導入のねらいについて、石本賢一取締役はこう説明する。
親孝行月間は平成16年に導入した。毎年4月1日、宮脇宣綱社長が「寸志」と書かれた封筒を社員全員に渡す。その額1万円。正社員だけでなく、契約社員やパート社員も含めた全在職者が対象で、支出額は1千万円を超え、半端な金額ではない。
それでも「それに見合うだけの効果は十分にある」と石本取締役は断言する。その理由は何だろう。
社員は1万円をどのように使ったかを文書で報告することになっている。その内容を見ていて、社内外に対して思いやりのある、優しい社員の比率が高くなっていることを実感するからだという。
設計管理課に所属するある社員は「母が少し前から行きたいと言っていた焼き肉を食べに行った。母が喜んでくれたことがとてもうれしかった」という文書を提出した。
また、あるパート社員は「鹿児島の母の墓前に花を手向けた。母も喜んでくれていると思う」と記し、合わせて会社への感謝の気持ちをつづった。
他愛もない内容かもしれないが、こうした“ちょっとした行為”に、家族への「感謝」の気持ちが十分に見てとれる。
この親孝行月間を導入したのは創業者の今井光郎会長。貧しい家庭に生まれた今井会長は、家計を助けるために進学をあきらめた兄や姉のおかげで高校を卒業することができた。
そうした自身の経験が、会社創業時に掲げた『社員のため』『社員の家族のため』という経営理念になり、現在の親孝行月間につながっている。
一方、同社には親の誕生日など、社員それぞれの記念日に会社から花束を贈る制度もある。
また、一風変わった「表彰推薦書制度」というものもある。『社員のため』という経営理念を具体化したので、全社員が推薦権を持ち、会社に対して特に貢献した社員(契約社員、パート社員を含む)の表彰を要望するというもの。
推薦者は推薦したい社員や社内のグループなどについて、表彰推薦書に推薦理由を明記。その表彰推薦書は上司(部門長)に回され、上司の承認が得られれば、宮脇社長のもとに届けられる。そして、最終的に宮脇社長が表彰の有無を決定する。
表彰式は年4回実施。それぞれの行為や貢献度に応じて賞金などが贈られる。表彰推薦書は全社員に回覧され、「ほかの社員に評価されることで、大きな自信とやりがいにつながる」(石本取締役)という。
家族や社員に対する感謝の気持ちを育て、社員が「人」として成長する。その姿勢は自然と社外に向かうのが人というもの。同社発展のカゲには「感謝の経営」がある。(香西広豊)
本社=大阪府岸和田市土生町1-4-23
設立=昭和49年4月
事業内容=住宅分譲など
売上高=715億円(平成24年3月期)
従業員数=1026人(同9月末現在、パート含む)