ニュースカテゴリ:企業
自動車
日産5位転落…復活の鍵はHV 軽で出遅れ、稼ぎ頭のマーチ失速
更新
2012年の国内新車(登録車+軽自動車)販売シェアで、2位以下が大きく変動した。特に日産自動車が12.3%と、前年から1.7ポイント下げ、2位から5位に落ちたのが目立った。
その要因は、新車市場の4割近くを占めるようになった軽自動車シフトの潮流に乗り遅れたほか、主力小型車の販売低迷も重なったためだ。同社が掲げる「国内販売2位」に復活するには、軽の強化に加え、出遅れているハイブリッド車(HV)の早期拡充が求められている。
「昨年は国内市場全体が軽にシフトしていったが、当社はついていけなかった」。日産の片桐隆夫副社長は、シェア低下の理由をこう釈明する。
同社の昨年の国内新車販売台数は前年比11.6%増の65万9756台と、2桁の伸びだ。エコカー補助金の効果が大きかったが、それ以上にトヨタ自動車やホンダはHVや軽自動車のヒット車種で、いずれも4割以上の伸びを示した。
トヨタはシェアを31.5%に伸ばし、ホンダも11年の5位から2位に躍進した。日産は、軽を得意とするダイハツ工業、スズキの後塵(こうじん)も拝した。
軽の販売では「OEM(相手先ブランドによる生産)調達先のスズキが思うように供給してくれなかった」との恨み節も漏れるが、日産が頭を悩ませるのは、既存の登録車も低迷していることだ。
その例は販売第一線にも表れている。都内のある販売店には稼ぎ頭だった小型車「マーチ」の試乗車はおろか、展示車すらない状況。女性販売員は「前のモデルは女性寄りのデザインで男性の受けが悪く、2年前の全面改良でデザインを大幅に変更した。それでも前モデルの方が売れた」とため息をつく。
マーチは10年からタイ生産を始めた4代目モデルが振るわず、昨年8月以降は月間4000台を大きく下回る状態が続く。
自動車アナリストは「マーチは日本だけでなく、海外でも売れていない。次期モデルではプラットホーム(車台)を変える可能性がある」と指摘。前モデルの全面改良は約8年ぶりだったが、次期モデルの全面改良時期が早まる可能性が高い。
マーチのほかにも、小型車「ノート」、主力ミニバン「セレナ」は健闘したものの、年間の車種別ランキングのトップ10に1車種もランクインできず、「ヒット車種が出なかった」(同社幹部)。
シェア挽回として日産が期待をかけるのが、三菱自動車と共同開発して6月にも発売する軽の新型車だ。折半出資の新会社「NMKV」が手がける第1弾の軽は、日産の「オッティ」、三菱自の「eKワゴン」の後継車で、エンジンや車台を新開発し、デザインを変えて両社が販売する。これまでOEM調達に頼ってきた日産にとって自社の設計陣が加わったモデルとなることもあり、「乗り心地や内装が充実した」(関係者)と自信を示す。
日産の強みは、全国約2200店舗の強力な販売網だ。メリルリンチ日本証券の中西孝樹リサーチアナリストは「軽がうまく回れば登録車にもいい効果が出る」と分析する。
ただ、日産が「日本で2番目に大きなメーカーとしてやっていく」(カルロス・ゴーン社長)ことを実現させる最大の鍵は、HVといえそうだ。
同社はこれまで、次世代エコカーは電気自動車(EV)と位置づけていたが、昨年12月には「(特定分野に特化しない)ゼネラリスト」(ゴーン社長)として、HVも拡充する方針を固めた。HVで快走するトヨタをよそに、日産のHVは2モデルにとどまっていた。それを2016年までに一気に15モデルを投入する計画を打ち出した。EV重視のあまり、HVで出遅れたことの反省ともみられる。
そのEVでは、4月から「リーフ」全3モデルを一律28万円値下げする。EVのインフラといえる急速充電器では、経済産業省が早ければ14年度までに全国のガソリンスタンド数に匹敵する約3万6000基を導入する計画など追い風も吹く。片桐副社長も「本気で拡販する」と意気込むが、HV並みに普及するには車種が少なく、時間がかかるとの見方は多い。
いきおい、HVがシェア変動の鍵となるが、今年はホンダがトヨタの燃費性能を上回る「フィットHV」を9月に発売するほか、富士重工業、マツダも販売予定で、競争激化は必至。これに対し、日産の新HV投入時期は未定だ。
導入が遅れれば、昨年、エコカー補助金で需要がピークにあったにもかかわらず供給できなかった軽自動車の二の舞いになりかねない。国内2位復活の実現には、早期のHV投入が不可欠といえる。(古川有希、飯田耕司)