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ベストバイ社長を救った交換日記 「社員の気持ちがわからない」と悩む
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社員が手帳に個人や家庭、仕事の目標を書く。福嶋社長は昨年、乃木希典将軍の生きざまでページを作った=大阪府東大阪市 全国でリサイクルショップ「良品買館」「キングラム」を運営するベストバイは、毎週正社員約100人一人ひとりと社長との間で、欠かさず交換日記を続けている。
店舗の拡大とともに社員数が増加するのにともない、経営トップと一線の社員との関係が薄らぐことに危機感を感じた福嶋進社長(55)が一計を案じて開始した。一方で、若い店長の“人間教育”の場にと、毎月泊まりがけの合宿も実施。何かとビジネスの妨げになる“ギクシャクした人間関係”の追放に効果を上げている。
ベストバイは福嶋社長が平成15年に設立。同年10月に大阪府茨木市内に「良品買館」1号店をオープンした。「世間でリサイクルへの関心が高まっていた時期で、現場を回りながら独学でノウハウを吸収した」と振り返る。
同社は買い取った商品を販売する際のルールに「2週間で売れる値段」を心がけている。店頭に並べてすぐに売れるようでは安すぎ、2週間を過ぎても売れない場合は高すぎるという考え方だ。そこには「お客さまが常に得をするように」という福嶋社長の経営理念があり、それが社名そのものになった。
店舗網は順調に拡大し、現在、直営店が関西、関東を中心に43店、フランチャイズ店も関西を中心に70店を超える。これに伴い、従業員数も当初の7人から正社員約100人、準社員・パート社員約200人をかかえる所帯になった。
ところが、それにつれて思わぬ問題が…。
「店舗が増えるにつれ、社員の気持ちが以前ほど分からなくなっていった」と福嶋社長は振り返る。
創業者だからこそ気づくことなのだろう。危機感を感じた福嶋社長が頭を悩ませた結果、思いついたのが交換日記だった。
始めたのは5年前。正社員全員が毎週、A4用紙1枚の「日記」を書いて、金曜夜に社長宛にファクスする。福嶋社長は土日を利用してすべてに目を通し、赤ペンでコメントを書き込み、月曜までにそれをスキャナーで読み取ったファイルをメールで返信する。
社員からの「日記」は店舗運営の問題点や悩みなどさまざま。もちろん、悪いことばかりではない。よく売れた商品やお客さんの声、思いついたアイデアなど、経営の参考になることもたくさんある。原則として、日記は他の社員にも公開している。
5年も続けた結果、双方の意思疎通に大きな効果を発揮し、いまでは「私のコメントが少ないと、社員から残念がられる」(福嶋社長)というくらい楽しみにしている社員が少なくないという。見事なコミュニケーションの手段として定着した。
一方、1店舗あたりの従業員は平均15人で、このうち正社員は20~30代の正・副店長だけという店舗がほとんど。大半は準社員やパート社員で、しかも30~40代が多い。チェーン展開する店舗では、よくある形態だ。
ここでも“人間関係”は店舗を運営するうえで重要な要素だ。「店長が年上の人から慕われるようでないとお店が回らない」と福嶋社長。「『店長があそこまでやっているんだから協力しよう』と思ってもらえる人間にならないといけない」と話す。
このため、奈良県香芝市内に住宅を改造して研修施設を設けた。「知命塾」と命名した2泊の合宿を随時開いており、若手は毎月、ベテラン社員も最低でも年2回は参加する。
昼間は福嶋社長が失敗から学んだことや、京セラ創業者の稲盛和夫氏の経営哲学、果ては論語に至るまで幅広く講義。夜は車座になって酒を酌み交わす。繰り返すうちに「現場の判断と自分の考えのズレが小さくなってきた」と手応えを十分に感じている。
リサイクルショップ業界は、市場の拡大とともに顧客が求めるレベルも上がっている。福嶋社長は「だからこそまだマーケットが広がる余地がある。リサイクル店を利用していない人たちの需要を掘り起こしたい」と一層の事業拡大をにらんでいる。
そのためにも、全社で共有する経営理念と各店舗でのよい人間関係の「両輪」が一層大切になってくる。この週末も社長と全社員の交換日記が続く。(南昇平)
◇会社データ◇
本社=大阪府東大阪市新庄東5-25
設立=平成15年5月
事業内容=リサイクルショップ経営
売上高=38億円(平成24年8月期)
従業員数=約300人(同12月現在)