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B787まさかの“視界不良” 全日空、日航、空港の期待と誤算

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B787まさかの“視界不良” 全日空、日航、空港の期待と誤算

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 米ボーイングの最新鋭中型旅客機「787」のバッテリー発煙のトラブルによる運航停止が、関西の空にも影響を及ぼしている。大阪(伊丹)空港などで、787を世界で初めて導入した「ローンチカスタマー」の全日本空輸便の欠航が続いているためだ。欠航は航空会社だけでなく、空港の収入にもマイナスとなる。米連邦航空局(FAA)は3月、改善を施したバッテリーを搭載した機材の試験飛行を許可し、ボーイング社は最短数週間での運航再開が可能との見方を示す。だが、失った信頼をどれだけ早期に回復できるかは不透明だ。

 相次ぐ欠航で空港

 787をめぐっては1月中旬、全日空機の機内で発煙し、高松空港に緊急着陸するなどのトラブルが相次ぎ、日米当局などが運航停止を指示した。787を17機保有する全日空では、5月31日までの累計で国内線2662、国際線939の計3601便が欠航。7機保有する日本航空でも3月30日までで国際線94便が欠航するという。

 全日空は国内線、国際線ともに787を投入。関西ではそもそも羽田-伊丹線でしか運航していなかったが、機材繰りなどの影響で欠航が相次いでいる。伊丹空港発着では仙台、福岡の2路線、関西国際空港発着では韓国・ソウル線で、3月31日~5月31日に欠航が出るという。

 また中部国際空港発着でも、札幌、福岡の2路線とソウル線で欠航が出る。一方の日航は国際線のみの運航で、関空、中部ともに影響はないという。

 全日空では予約のキャンセルなどにより、1月の売り上げが約14億円減少する見込み。2月以降は現時点では見込めないと言葉を濁すが、影響は小さくない。日航では1~3月で約11億円の売り上げが減少する見通しだという。

 空港側の収入も減る。伊丹空港と関空を一体運営する新関西国際空港の関係者は、「欠航により、着陸料や施設使用料収入が減ってしまう」と頭を抱える。中部国際空港会社の担当者も、「利用者が減ることで商業面の売り上げに影響する」と話す。

 全日空の誤算

 機体数が多い全日空の欠航が際立って多い。なぜか。

 「787はゲームチェンジャー(勝負の流れを変えるもの)になる」。全日空の伊東信一郎社長は、787導入に際し、繰り返しこう強調していた。

 787は機体に炭素繊維を採用するなどして燃費効率を従来より約2割高めた次世代機で世界的に注目は高かった。また、787は三菱重工、川崎重工など、機体構造の35%を日本メーカーが製造し「メイドインジャパン」と話題性の高い機体だ。

 全日空は開発段階から787に関わり、平成16年に行った50機もの大量発注で、1号機を受け取るローンチカスタマーとなった。航空会社間の競争の中、大々的な宣伝で国際的な知名度を高めようとしてきたことも背景とされるが、その強い意気込みがトラブルによってあだとなった格好だ。

 ボーイングの意気込みにも日本当局は慎重

 FAAは3月12日、改善を施したバッテリーを搭載した試験飛行を許可した。

 また、ボーイング民間航空機部門のレイモンド・コナー社長兼CEO(最高経営責任者)らは15日、東京都内での記者会見で、最短で数週間以内の運航再開が可能との見方を示した。

 同社はバッテリーに保護システムを取り付けた新型バッテリーシステムを導入すると説明。B787の改善策は包括的で、安全性には絶対の自信を持っていると強調した。

 空港側の期待も大きい。中部空港会社は、中長距離の国際線に適している787の就航を全日空に打診してきたといい、担当者は「早く運航を再開して中部に就航してほしい」と熱望。新関空会社は「運航コストを抑えられる787なら海外の航空会社の就航が増える可能性がある」として期待を寄せる。

 試験飛行などが順調に進めば、4月後半にも商業運航が再開できるとの見通しもある。だが国土交通省は安全確保が大前提で、「再開の時期は分からない」と慎重な見方を示した。

 また、トラブルを起こした787から脱出する搭乗客の映像で、依然としてマイナスのイメージがあり、新関空会社の関係者は「安全性はしっかりとクリアしてもらわないといけない」と語気を強める。一度失った信頼を取り戻すのは容易ではない。(中村智隆)

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